「イクメン」社会に浸透?
毎日新聞No.392 【平成25年8月2日発行】
厚生労働省が2010年6月、男性の子育て参加や育児休業取得の促進等を目的とした「イクメンプロジェクト」を発足させた。当時の同省報道発表資料によると、プロジェクトは、働く男性がより積極的に育児に携わったり育児休業を取得したりできるよう社会の気運を高めていくことが目的。「イクメンとは、子育てを楽しみ、自分自身も成長する男のこと」をコンセプトに、育児をすることが自分自身だけでなく家族、会社、社会に対しても良い影響を与えるというメッセージを発信し、社会にその意義を訴えていく、とのこと。
それから3年余り。同省が発表した 「2012年度雇用均等基本調査」によると、男性の育児休業取得者割合は1.89%で、前年度と比べ0.74?低下したという。国策として打ち出したプロジェクトの成果は、まだ結果として表れてきてはいない。
ところで、雇用保険法によると、育休中は原則として給与は支払われない。休業前の給与額の5割(上限あり)が「育児休業給付金」として雇用保険からもらえるだけで、給付期間も原則子どもが1歳になるまでとされている。長い育休を取ってゆっくり子育てしたくても、収入が減ってしまうため生活が成り立たない。育休をとりたくても、職場になかなか理解してもらえないケースも多いようだ。
そんな中、つい先日だが、田村憲久厚労相が「男性が育休を取りづらいのは、給付率が低いことも理由の一つだ」として、育児休業給付金の増額を検討する旨を発表したという報道があった。また、日本生命保険が今年度から、子どもが生まれた男性社員全員を対象として、1週間以上の育休を義務付ける取り組みを始めた。同社は昨年度、男性の育児参加を推進することを目的とした「イクメンハンドブック」を作成し、従業員の理解浸透に努めている。
このように、イクメンプロジェクトの意義は、少しずつ社会に浸透してきているのかもしれない。これがさらに浸透し、職場環境や、法制度などに大きな変革が生まれることになれば、明るい未来を期待できそうだ。
(山梨総合研究所 研究員 岡 浩之)