おもてなしは地域で進めよう
毎日新聞No.393【平成25年8月23日発行】
清里 萌木の村で行われた第24回フィールドバレエを観賞した。
連日報道され、全国的にも暑い地域と認知されつつある甲府の酷暑から逃れ、高原の爽やかな締まった空気のもと、野外ステージで繰り広げられた幻想的な世界を堪能することができた。
来訪者を心からもてなそうという気持ちが出ていた関係者の接客。そして最上のバレエ。清里のため、清里の文化のために、途中多くの困難に遭いながらも24年間という年月を積み重ねてきた関係者の想いが伝わってきて、このバレエを山梨県内で見られるという事実に喜びを感じた。また、県外からの来訪者の「素晴らしい」という評価に触れると、郷土の資源を褒められた気分になり、県民として誇りにすら思った。
しかしながら、この満足感に水を差す出来事を経験した。
当日は、清里の他の地域も見てみたいと郷土料理の店で夕食をとったのだが、そこでの接客態度は、お世辞にも良いものとは言えないものであった。
来訪者は、普段、当たり前のように接している当たり前のサービスを求めているだけである。寛容な県民が多い山梨県では多少許される接客態度であっても、特に、東京など飲食店の競争が激しい地域から訪れた来訪者には激しく不快に感じることがあることを認識しなければならない。
山梨県では、平成23年12月22日におもてなしのやまなし観光振興条例を制定している。
おもてなしの心は、本来であれば、条例をつくり広く情報発信をする必要はなく、飲食業などに従事している場合は、当たり前と感じなければならないものである。この条例を策定した詳細まではわからないが、清里での出来事から策定背景の一端に触れた気がした。
熱気あふれ、地域を良くしようと尽力を惜しまない方々の取り組みや想いも、その周辺を含めた地域全体の協力なくしては全くの無になってしまう。
当日、多くの客に対応し続けたであろう従業員らにも同情の余地はあるが、その一時の態度のために、二度とその地を訪れることのない来訪者を作ってしまうことを認識しなければならない。
地域の振興のためにも、いま一度、地域全体でおもてなすという意味を考えてもらいたい。
(山梨総合研究所 主任研究員 古屋 亮)