異常気象と防災対策
毎日新聞No.394【平成25年9月6日発行】
今年の夏は、猛暑とともに大雨のニュースが報じられている。7月下旬には島根、山口両県では「経験したことのない大雨」による洪水、土砂崩れで山間部の住民が孤立した。気象庁によると、萩市で1時間に138.5ミリ、津和野町で91.5ミリの豪雨であったという。また、8月下旬には気象庁は「記録的短時間大雨情報」を発表、島根の江津市、邑南町の全住民に避難勧告が出された。
東北でも、8月上旬には秋田、岩手両県で、8月下旬には宮城沿岸部で大雨が降った。都内では、7月下旬、時間当たり100ミリの局地的豪雨を記録する一方、関東地方の水がめの利根川水系ダムの貯水率は落ち込み続けている。
日本では日降水量が100ミリ以上となる年間日数は、20世紀初頭に比して1.2倍、200ミリ以上となる日数は1.4倍と増加。集中豪雨とともに異常少雨も増加している。原因として地球温暖化があるが、洪水、土砂災害などの自然災害に対処するには、温室効果ガスの削減策(緩和策)に加え、自然災害を軽減する適応策が重要だ。
山岳地域はグローバルな気候変動を早期に示す指標である。ヨーロッパ・アルプス地域では氷河は1850年以降、50%が失われ、積雪は低標高の地では特に減少している。平均気温は過去100年で、地球レベルでは0.78℃上昇したのに対し、高標高地域では2℃上昇した。アルプス地域では水循環、生物多様性、農業生産性、エネルギー、主要な経済分野の観光についても、マイナスの影響が強く表れる。地域データの収集、早期警報システム・緊急事態計画の普及・促進、多言語のハザードマップの開発・利用、氾濫原、洪水の導水路、ため池の規模拡大、水害リスクを考慮した土地利用などの自然災害への適応策が重要であると広く、認識されている。
急流河川を抱える山梨県は、土石流、土砂崩れなどが頻発する場所であり、水・土砂災害を軽減する様々な技術的対策がなされてきた。他方、人口や集落が減少するにつれ、自然災害に対する防災活動が困難な地域も増えつつある。長期的な観点から、集落や居住地の集約を含めた土地利用のあり方を県民一人一人が考える時代になっている。
(山梨総合研究所 調査研究部長 中田 裕久)