みんなで美しい山梨を
毎日新聞No.396【平成25年10月4日発行】
最近ファストフード店に加え、コンビニエンスストアでもコーヒーをはじめとしてテイクアウト用の飲み物を提供するようになってきた。消費者側から見ると、まさに名前の通り身近で、かつ手頃な値段で手に入れることができ便利である。容器のデザインはお洒落、しかも安価で我々の欲望を満たしてくれる。なにより通勤途上で気軽に購入、職場に到着して「さて一日が始まるぞ」と机に向かい、気を引き締めながら飲むコーヒーは格別である。
一方でこうしたテイクアウト方式が一般化したことにより、街なかで歩きながら飲み食いする姿、乗合バスの中で友達と容器を広げ食べだす学生など、以前では見掛けない光景に出くわす。そして不用となった飲み物の容器は路上や家々の陰に捨てられている光景を目にすることが多くなった。テイクアウトの販売方式が消費者のニーズに合致していることは疑いないが、使い捨ての容器は資源のムダ、容器の投棄は環境美化に反する行為であり、ひいては社会的規範の劣化を招きかねない。我々は利便性を手に入れたことと引き換えにこうした負の現実があることを心に留めるべきである。
さて、住みよい地域社会、美しい環境の保全、気持ち良い日々の暮らしなどを考えた時、このテイクアウト方式の販売方法には少し工夫が必要ではないだろうか。この際、循環型社会の実現を目指して活動する「NPO法人スペースふう」などの取組が参考になる。こうした取組は企業にとっても社会貢献と資源のリサイクルと言う視点から有意義であり、この企業努力は消費者、地域社会から高い評価を得ることにも繋がる。
折しも山梨県では、今年6月富士山がユネスコの世界文化遺産に登録された。また、2011年12月にはおもてなし条例が施行され、おもてなし活動を全県下で実施している。企業も個人も県民は目に見える形でこうした活動に積極的に関わるべきである。それは日常の中で、身近にできる美化運動や社会規範を守ることから始まるのではないだろうか。便利な社会を持続可能とするためにも老若男女・一人一人が守らなければならない規範が有る事を心に刻み、「住み良い山梨・美しい山梨」の姿を作り上げていくべきであろう。
(山梨総合研究所 専務理事 福田 加男)