ビッグデータの活用
毎日新聞No.398 【平成25年11月1日発行】
先日、観光庁が観光振興にビッグデータを活用する手法の検討をはじめたと報道された。全国の8つの地域を対象に観光客の行動パターンの把握、分析を試験的に行うとされている。
この8つの地域の中には、八ケ岳観光圏と富士山周辺地区という山梨県内の2地域が含まれており、山梨県の観光振興に役立つことが期待される。
最近よく耳にするようになったビックデータというのは、一般的な機器やソフトウェアでは処理しきれないような膨大なデータのことで、観光庁の場合は、許諾を得た70万人の携帯電話の位置情報などがそれにあたる。携帯電話にGPSが内蔵されることが当たり前になったことで、人々がどのように行動しているかを把握することが容易になった。
これまでは、観光地などで個別にアンケートをして、どのような観光地をまわっているかを把握するしかなかったが、位置情報を利用すれば、何十万人もの人々の周遊情報を得ることができる。この大量のデータを解析することで、今までは想定されていなかった周遊パターンや観光資源を発見できる可能性があり、観光振興の新しい手法となることが期待されている。
ビッグデータの活用が注目されるようになった背景には、デジタル技術の浸透によりデータの収集が容易になったという点があげられる。
例えば、インターネット上の本の通販サイトであるアマゾンでは、人々がサイト上で検索、閲覧、購入している履歴を記録しており、それを解析することでその人にお勧めの本を即座に示す機能を実装している。
このような技術は私たちの生活を便利にしたり、産業を活性化するのに非常に役立つが、個人のプライバシーを侵害しかねないという側面も持っている。
そのため、ビックデータの研究は、個人情報の保護のための技術とセットで研究されていることが少なくない。
情報社会に生きる私たちもどの情報を提供し、どの情報は提供しないのか、選択する能力が求められているのかもしれない。
(山梨総合研究所 主任研究員 進藤 聡)