フロンティアは拓けるか
毎日新聞No.400【平成25年11月29日発行】
ミス・ユニバース世界大会の代表選考会がミャンマーで52年ぶりに開催されたとの最近のニュース。民主化の進展著しい彼の国の変化を象徴する出来事として耳目を集めた。
近年、「最後のフロンティア」とも称されるミャンマーに熱い眼差しが注がれてきた。海外での事業展開を模索する中小企業は、人件費メリットや地勢上の優位性などから、有望進出先として期待を寄せている。
そこで、山梨総合研究所「アジアフォーラム21研究会」では、現地へ赴き、在ミャンマー日本国大使館の表敬訪問をはじめ、ジェトロ・ヤンゴン事務所、ミンガラドン工業団地の運営事業者へのヒアリング調査を実施した。
ミャンマーの人口はおよそ6,000万人でアセアン諸国の中位にあり、2011年の民政移管後テインセイン大統領が主導する民主化改革によって国際社会における地位は向上しつつある。安倍首相、オバマ米大統領など各国要人の訪問が引きも切らず、国民は誇りを取り戻しつつあるようだ。
国民一人あたりGDPは835ドルとアセアン域内では最低水準ながら、経済成長は年々加速し6.5%まで上昇してきた。日系縫製工場で勤務する女性工員の月額給与は7万チャット(約7千円)と、安価で豊富な労働力に恵まれている。国民感情は親日的といわれ、国民の9割を占める仏教徒の価値観や勤勉な人柄もわが国との親和性がある。こうした好材料を背景に、ジェトロ・ヤンゴン事務所への日本企業の訪問や現地視察件数は増加しているとのことだ。
一方、水力発電を主としているため、雨季・乾季を通しての安定的な電力供給が困難であること、日系企業が立地するに足るインフラの整った工業団地が満杯状態であることなど、事業活動の根幹に関わる課題も存在する。
ただ、ヤンゴン南郊のティラワ地区では新たな工業団地や産業インフラの開発計画が日本主導で進められており、日系企業の進出環境は格段に向上すると見込まれる。
2014年にアセアン議長国を務めるミャンマー。外交の成功が更なる飛躍のきっかけとなるかどうか。また、2015年の総選挙は国内政治の安定度を占う試金石となる。わが国の地域経済に恩恵をもたらすパートナーたり得るか、激動のミャンマーの今後を注視したい。
(山梨総合研究所 主任研究員 中村 直樹)