フルーツ大使への期待


毎日新聞No.401【平成25年12月13日発行】

 11月28日、山梨学院大学健康栄養学部の学生80人がフルーツ大使に任命された。
 フルーツ大使には、若者のフルーツ消費拡大のきっかけを作ることが期待されている。

  若者のフルーツ離れについては以前から指摘されている。厚生労働省では、毎日果物200g運動を展開しているが、農林水産省の「果樹をめぐる情勢」(H25)を見ると、現在フルーツの消費量は平均で106.8g/日で、10年前の122.9g/日から減少している。以前から20~30歳代のフルーツ消費量は少ないが、今回の調査では40~50歳代のフルーツ消費量が30%以上減少と、他の世代よりも大きく減少した。フルーツ消費が少ない層がそのままシフトしている。
 この調査からはフルーツを食べない原因も示唆されていて、フルーツを買わない理由として「皮をむく手間がかかる」、「他に食べる食品がある」等が大きな割合を占めたことは、ライフスタイルの変化にフルーツが対応できていないことを示す。
 当然、フルーツの需要拡大に向けて多くの取り組みがなされている。山梨県が推進している高品質の農産物を全国の消費者にPRする富士の国やまなしの逸品農産物認証制度もその取り組みの一つである。
 全国では、学校給食への導入や機能性成分の解明等が進められ、消費拡大に向けた多くの取り組みがなされている。
 中でも農林水産省近畿農政局が近隣の大学生とともに実施している「近畿フルーツ・レンジャープロジェクト」は、「若者の視線からフルーツの選び方や食べ方を提案し、フルーツの需要を拡大していこうとする取り組みで大きな注目を集めている。  
 今回始まったフルーツ大使制度はこうした取り組みを参考に実施するものである。

 フルーツ大使は、笛吹市の若手農家で構成された協議会と一緒に、フルーツの生産や農村の現状について研修を重ねながら、フルーツを活用した都市農村交流プランを作成する。フルーツ大使は、管理栄養士の卵でもあるので、プランの中には栄養士としての視点が入った新しい提案となるだろう。
 フルーツの需要拡大に特効薬はないことは承知しつつ、山梨県で新しく始まったこの活動が、若者のフルーツの消費拡大につながりフルーツ王国山梨の未来を照らす取り組みとなることを期待したい。

(山梨総合研究所 主任研究員 千野 正章)