太陽熱利用に期待する
毎日新聞No.404【平成26年1月24日発行】
日本では低炭素社会とともに人口減少、高齢化社会に対応した持続可能な地域社会の形成が課題である。
地球温暖化対策基本法案は平成22年3月に閣議決定されたが、翌年の東日本大震災と福島原発事故を受け、結果として廃案となった。当時の民主党政権は原発の新増設によって、2020年までに1990年比25%の二酸化炭素削減を目指したが、目標達成が不可能になった。現政権は「原子力をベース電源」とするエネルギー基本計画を持つものの、党内議論が必要とのことで先送りすることとしている。
日本の環境技術、省エネ技術は世界でもトップレベルにあるとされる。他方、人々を巻き込んだ持続可能な地域づくりといった社会的な仕組みづくりや技術導入のための法制度については未成熟である。
ヨーロッパに倣い電力買取制度の導入後、1年余が経過した。平成24年7月から平成25年10月までの再生可能エネルギー発電設備の導入量(運転を開始したもの)は585万kWで、その内太陽光発電は567万kWと97%を占め、バイオマス発電、風力発電、小型水力、地熱発電の普及はごく少ない。太陽光発電は他の自然エネルギーに比して、調査に要する期間が短く、規制も緩く、簡単に設置することが可能で買い取り価格も高い。このため全国各地でメガソーラー計画が推進されているが、中には地主の許可なくメガソーラー計画をでっち上げ、認可を得て、権利を転売する利権ブローカーも現れ、ソーラーバブルの様相を呈している。なお、26年度に太陽光発電の価格のみ1割程度引き下げられている。
太陽熱利用のエネルギー効率は太陽光発電の3~4倍である。かつて、オイルショック後の日本は太陽熱利用でも先頭を走っていたが、オール電化の進展などで廃れた経緯がある。
家庭での給湯などの熱需要を太陽熱利用でまかなえば、電気よりも効率的で、節電や化石燃料の削減に大きく寄与する。特に、熱単価の高いLPガスを利用している地域にとっては、エネルギーコストの削減に役立つ。県内でも太陽熱利用に取り組んでいる企業もあると聞く。地域ニーズに合致した安価で利用しやすい太陽熱利用機器の開発が待たれる。
(山梨総合研究所 調査研究部長 中田 裕久)