Vol.187-1 山梨県における非正規雇用者の状況


【山梨学院大学法学部政治行政学科 准教授 大髙 瑞郁】

1 はじめに

 我が国の非正規雇用者(勤め先での呼称が「パート」「アルバイト」「労働者派遣事業所の派遣社員」「契約社員・嘱託」「その他」の雇用者)は、1990年代後半から2000年代前半にかけて大幅に増加した(厚生労働省, 2014)。その後も2009年を例外として増加の一途を辿り、2013年には過去最高の1,906万人となった。
 非正規雇用者として働くことには、労働時間や期間を自ら選択することが可能といった利点がある一方、雇用の不安定性や、賃金の低さ等が課題として挙げられている(厚生労働省, 2014)。
 山梨県において、非正規雇用者はどのような状況に置かれているのだろうか。本稿では、山梨県の非正規雇用者の現状について、山梨県企画県民部統計調査課がまとめた「平成24年度就業構造基本調査」結果の概要 (2013) に基づき確認していくこととする。
 就業構造基本調査は、国民の就業状態を調査し、全国及び地域別の就業構造の基礎資料を得ることを目的として、1956年からこれまでに16回(1956-1982年:3年ごと、1982年以降:5年ごと)、総務省により実施されてきた。
 最新の調査は2012年に実施されたもので、全国から無作為に選ばれた約47万世帯の15歳以上の世帯員約100万人、山梨県では約9,000世帯の15歳以上の世帯員約2万4,000人が調査の対象とされた。

2 山梨県の現状

 まず、山梨県の非正規雇用者は13.8万人で、雇用者(役員を除く)34.8万人の39.5%を占めている。これは全国平均38.2%を上回っており、都道府県別にみると、沖縄県(44.5%)・北海道(42.8%)・京都府(41.8%)大阪府(41.3%)・福岡県(40.0%)・鹿児島県(40.0%)・奈良県(39.7%)・埼玉県(39.6%)に次ぐ全国第9位の高水準である。
 また、これまでに調査が実施された2002年・2007年と比較すると、実数、雇用者(役員を除く)に占める割合、共に上昇傾向にあることがわかる(図1)。

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図1 非正規雇用者数及び雇用者(役員を除く)に占める割合の推移

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図2 性別
非正規雇用者数及び雇用者(役員を除く)に占める割合の推移

 なお、その内訳を性別ごとに示したものが図2である。非正規雇用者に女性が多く、女性雇用者(役員を除く)の過半数が非正規雇用者として働いている傾向が調査年を問わず一貫して示されている。
 さらに2012年の非正規雇用者13.8万人について、性別・年代別にみてみると、とくに35-54歳の壮年層で、女性が多く男性が少ないという性差が顕著に表れている(図3)。このような性差は「男性は仕事、女性は家庭」という性別役割分業意識や、女性の共感傾向により (Pinker, 2008) 、とくに子育て期に、女性が仕事より家庭を優先させるため、家庭の事情や家族の都合に合わせて、働く時間や期間を比較的容易に変えられる非正規雇用者として働くことを選択するために生じている可能性が考えられる。

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図3 性別・年代別
非正規雇用者数及び雇用者(役員を除く)に占める割合

 

(1) 雇用の安定性

 雇用の安定性について、雇用契約期間の定めの有無の観点から比較すると、正規雇用者のほとんど(92%)が契約期間の定め無く雇用されている一方、非正規雇用者の約半数(48%)が何らかの契約期間を定めて雇用されており(図4)、その雇用は不安定だと言わざるを得ない結果となっている。

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図4 雇用形態別
雇用者(役員を除く)の雇用契約期間の定めの有無

(2) 賃金

 賃金に関して、主な仕事からの年間収入を雇用形態別に示したものが図5で、非正規雇用者の39%が100万円未満、41%が100-200万円未満と、大半(80%)が200万円未満の年間収入に留まっていることがわかる。その一方、正規雇用者で年間収入が200万円未満の割合は12%で、200-300万円未満が24%、300-400万円未満が21%、400-500万円未満が15%、500万円以上が28%と、大半(88%)が200万円以上の年間収入を得ている。したがって、賃金についても、非正規雇用者と正規雇用者とでは、隔たりがあるといえる。
 さらに性別ごとに分けてみても、非正規雇用者は正規雇用者より年間収入が低い傾向が男女ともにみられ、雇用形態それぞれにおいて、男性より女性の方が年間収入が低いこともみてとれる(図6)。

3 山梨県のこれから

 以上みてきたように、山梨県においても、非正規雇用者は、雇用が不安定で、賃金が低いという問題を抱えている。そして、ここ10年、山梨県の非正規雇用者は増加し、他県と比較しても、非正規雇用者が雇用者(役員を除く)に占める割合が高くなっている。

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図5 雇用形態別
雇用者(役員を除く)の所得(主な仕事からの年間収入)

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図6 雇用形態別・性別
雇用者(役員を除く)の所得(主な仕事からの年間収入)

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図7 性別「非正規雇用者として初職に就いた者」数及び
雇用者(役員を除く)に占める割合の推移

 加えて、非正規雇用者として初職に就く者が男女ともに増えており(図7)、前職が非正規雇用の場合、再び非正規雇用に転職する傾向も示されていることから、 非正規雇用者は今後も増加し続けると予測される。
 こうした状況を打開するため、初職で正規雇用職に就く者を増やすこと、非正規雇用から正規雇用への転換を促進することが肝要だといえる。また、自ら敢えて非正規雇用職を選択する者の存在も考慮し、同一賃金同一労働など非正規雇用者の待遇改善も重要な課題だと考えられる。

引用文献

厚生労働省 (2014). 非正規雇用(有期・パート・派遣労働)
 <http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/index.html>2014220日)

山梨県企画県民部統計調査課 (2013). 「平成24年度就業構造基本調査」結果の概要:山梨県の就業構造
 <http://www.pref.yamanashi.jp/toukei_2/HP/DATA/24shuugyou.pdf>2014220日)