大雪から考える街づくり


毎日新聞No.406【平成26年3月7日発行】

  観測史上最多の降雪から約3週間が経った。日常生活に大きな支障が出ただけでなく、産業、特に農業関係に大きな被害が出た。関係者の心労は大変なものであろう。一般市民としては何もできないに等しいが、再び希望の火を灯してほしいと思う。
  今回の降雪から学んだ教訓は、今後さまざまな局面で生かされていくだろうが、ひとつ提案したい。それは、行政の対応には限界があることを認識し、コンパクトで共助を積極的に活用する街づくりの議論を本格的に始めることである。

  今回の降雪では、孤立集落が多数発生した。大半は、過疎化が進んだ山間部の高齢世帯の地域である。以前はこうした地域にも多くの若者がおり、幹線につながる生活道路の最低限の除雪はできたと思われる。しかし、現在は、生活道路の除雪どころか、玄関から自宅敷地外への動線の確保さえ難しい状況であろう。
  誤解を恐れずに言わせていただくと、生活機能を街の中心部に再配置し、住民も街なかへの移住を図っていく、という議論を本格的に始めてもよいのではないか、ということである。財政破綻した北海道の夕張市は、大部分が空き家の老朽化した公営住宅や街の中心部から離れた地域の住民に、集団移住してもらう施策を進めている。人は長年住み慣れた土地に愛着があり、住まいを移すことに大きな抵抗があろう。非常に困難な事業と想定されるが、対象者のほぼ全員の合意を取り付けていると聞く。
  また、行政の対応が進まないなかで、今回、住民はさまざまな共助の動きを見せた。共同の雪かきに始まり、動けなくなった自動車の救出やドライバーへの炊き出しなど、多様な活動が行われた。薄れがちだった地域コミュニティの復活や日本人が潜在的に持つ素晴らしい気質を垣間見る機会になったと感じるが、自主性を重視しつつもこうした活動を自治体の対応を補完する機能として組み入れていく、という共助の仕組みづくりを進める必要性が高まってきているのではないか。

  少子高齢化、人口減少、財政の逼迫が今後も見込まれるなかで、街のコンパクト化、市民共助の地域維持機能としての位置づけについて、避けて通れない課題として早期の検討を期待したい。

(山梨総合研究所 主任研究員 村田 俊也)