VOL.45「富士山の標高「12センチ」低くなる」
国土地理院の測量方法の変更に伴って、富士山の標高が12センチ低くなり、3776.15メートルになったとの報道があった。国土地理院の定めでは標高をメートル単位で表記するため、3776メートルであることに変わりはないという。
この話を聞いて、ふと、山梨県の民話「富士山と八ヶ岳」を思い出した。むかし、「富士山」にはお浅間(せんげん)さんという気の強い女の神様がおり、富士山の北側にある山には権現さんという男の神様がいた。どちらもお互いが日本一高い山であると主張し、けんかばかりしていたため、地面は揺れ、頭から火を噴き上げ、辺りの人や獣に甚大な被害を与え続けていた。そのうち、いつまでもけんかばかりしていても仕方ないということで、阿弥陀如来様に判断を仰いだ。如来様は長いといを二つの山のてっぺんにかけ、真ん中から水を落とした。水が流れた方が低い山ということだ。水は富士山の方へと流れ、権現さんは勝ち誇った。お浅間さんはくやしくて権現さんの頭を棒でぶったたき、八つに割ってしまった。割れて低くなったのが八ヶ岳となり、富士山は日本一になった、というお話である。
民話とは逆に、今回は富士山が低くなってしまったというお話だが、その一方、南アルプス世界遺産登録推進協議会によると、現在第3位の間ノ岳(あいのだけ、3189.87メートル)がある南アルプスは、年間4ミリ以上の隆起を続けているとのこと。この調子で隆起を続けていけば、今度は14万6533年後に、間ノ岳とお浅間さんとの間に新たな火種が生まれる可能性もあるかもしれない。
(研究員 岡 浩之)