消滅可能性都市からの脱却
毎日新聞No.411【平成26年5月16日発行】
2014年5月8日、学識経験者らで組織する日本創成会議・人口減少問題検討分科会(座長・増田寛也元総務相)から発表された「ストップ少子化・地方元気戦略」は、非常に衝撃的な内容を含んだものであった。
人口減少問題は50年、100年先の遠い将来の話ではなく、地方の多くは既に深刻な事態を迎えており楽観論を唱えている余裕はないが、もはや手遅れと悲観するのはまだ早く、対策を抜本的に強化すれば効果が期待できる。
大きな戦略として、まず「ストップ少子化戦略」が挙げられている。これは25年に「希望出生率=1.8」を実現することを基本目標とし、若者が結婚し、子どもを産み育てやすい環境づくりのため、全ての政策を集中する、というものである。また、「地方元気戦略」として、地方から大都市への「人の流れ」を変えること、特に「東京一極集中」に歯止めをかけることを基本目標とする。
この発表では、地方の人口減少の最大の要因は、若者(男女)の大都市(特に東京圏)への流出であると分析されている。最も目を引いた部分を引用すると、地方からの人口流出がこのまま続くと、人口の「再生産力」を示す「若年女性(20~39歳)」が40年までに50%以上減少する市町村が896(全体の49.8%)にのぼると推計されており、これらの市町村はいくら出生率が上がっても将来的に消滅するおそれが高い。
発表資料の中から山梨県の市町村名を探した。県内27市町村のうち、いわゆる「消滅可能性都市」は59.3%にのぼり、40年に人口1万人を割る29.6%は「消滅の可能性が高い」と類別されている。
具体的な市町村名で減少人数の推計が示されると、全国規模で何千万人減少する、といわれるよりよほど危機感が迫ってくる。
おりしも、12年8月10日に参議院本会議にて可決・成立した「子ども・子育て関連3法」に伴い、15年4月の本格施行が予定されている「子ども・子育て支援新制度」に向け、県内市町村においてもニーズ調査、条例改正・制定、認可制度整備など対応に追われている。
県内各自治体においては、若年女性の流出を食い止め、また、子供を産み育てたいと思える子育て支援策を充実させ、「消滅可能性都市」からの脱却に繋がるよう期待したい。
(山梨総合研究所 研究員 岡 浩之)