レベルアップに例外はなし
毎日新聞No.414【平成26年6月27日発行】
FIFAワールドカップブラジル大会、決勝トーナメントが29日(日)から始まる。4年に1度のお祭りの中、普段見ることの出来ない強豪国同士の真剣勝負。深夜から朝にかけてサッカーを満喫するファンも多いことであろう。
日本にワールドカップの面白さを伝えたのは、1986年メキシコ大会ではなかろうか。ドリブルで何人をも抜き去りゴールを決めるなど話題を独占したマラドーナ。身体ごとゴールに飛び込むようなプレースタイルでイングランドサッカーを体現した大会得点王のリネカー、圧倒的なテクニックを披露したプラティニ。敗退の危機から諦めることなく最後にゴールを決めるなどゲルマン魂を体現したルンメニゲや華麗なテクニックを有していたブラジル代表のジーコ、ソクラテス、カレッカ。ちょうど40歳前後となるサッカーファンにとっては、少年時代に聞きなれた懐かしい名前が並ぶであろう。
当時の日本代表は、ワールドカップ出場には程遠いレベルにあったが、このメキシコ大会出場をかけたアジア予選では、最終予選まで進み国立競技場での木村和司の伝説的なフリーキックが決まるなど本大会出場に希望を持たせる内容であったが、最終的には韓国に敗れている。やはりワールドカップは遠いものだと感じたファンも多いであろう。
あれから30年近くの月日が流れた。今では日本代表は当たり前のように本大会に出場し、世界の強豪国に対策を立てられるレベルにまでなっている。本大会出場は当たり前、グループリーグ敗退では世論が許さない。そんな雰囲気すらある。とても贅沢である。
1986年当時の日本代表を思うと、ダイヤモンドサッカー(テレビ東京放映)でしか見ることの出来なかったマンチェスターユナイテッド、ACミラン、インテルミラノなどの世界的なビッククラブに日本人が所属するなど、誰が想像したであろうか。
何事も課題を乗り越え先に進むことが大切である。例外などは何もない。ひとつひとつ階段を登ってこそ、その先にある新たな姿が見えるものであろう。
今後とも一歩でも先に進むために、課題を克服し、レベルアップを続けて欲しい。
(山梨総合研究所 主任研究員 古屋 亮)