Vol.191-2 甲府地方卸売市場の活性化に向けて


 【山梨総合研究所 主任研究員 古屋 亮】

1.はじめに

 甲府地方卸売市場では、今年度末(平成27年3月)までに、「賑わいのある市場づくり」事業実施計画の策定を目指している。
 「賑わいのある市場づくり」の事業目的には、現在の市場用地の利用方法を見直す中で、活用できる用地を確保し、観光客や一般消費者に対して市場流通商品を販売する施設を整備し、「甲府市地方卸売市場のPR」、「新たな販売チャネルの開拓(新規需要開拓)」、「市場取扱量の増加」、「甲府市の新たな名所づくり」、「市場関係者による新商品開発や新事業創出によるインキュベーションの場」などを目指すものとし、このことで、甲府地方卸売市場の活性化や市場関係者の事業発展、行政コストの削減を図り、新たな集客の拠点施設とするものと期待されている。
 本稿では、この賑わいのある市場づくりに向け、施設建設の意義や求められる施設像について、明らかにしていきたい。
 そのために、まずは甲府卸売市場の変遷を述べ、その上で、消費者ニーズなどを参照にしながら求められる施設像を明らかにする。

2.甲府地方卸売市場の変遷と意義

 甲府地方卸売市場で扱う生鮮食料品は、一般の商品と違って、①鮮度が落ちやすい、
②長期にわたる保存が難しい、③種類が多種多様である、④天候や生産状況の影響を受けやすく、価格が大きく変わる、⑤消費量と生産量との調和が困難で、一定した価格を得ることが難しい、⑥小売店などでの需要が多種少量で非常に流動的である、という特性がある。
 このような特性を持つ商品には、過度の競争や公正でない取引が行われたり、また、衛生面が十分に行き届かない恐れもあり、消費者も生産者も大きな不利益を受ける心配がある。
 これらの点に適正に対応するための流通機構として、“卸売市場”が設置されることになり、甲府市は昭和48年に「中央卸売市場」を建設し、立地・環境的、また、衛生面でも整備された施設で、法令に基づいた取引ルールに従って、市民・県民の食生活に欠かすことのできない新鮮な野菜や果物、魚など食料品を全国各地から集荷し、公正で効率的な取引が行われるよう管理・運営を行っている[1]
 そして、中央卸売市場で扱える商品については、①規定により扱える品目が決まっているため、それ以外の商品を扱えない。②売買取引方法として、中央卸売市場に物品を持ちこんでそれを売買する商物一致の原則や、物品によっては条例により競りを実施しなければならない規制等があり、卸売業者の判断で決められるような売買取引方法の柔軟性がなかった。また③各事務手順について、事業者からの申請を承認する。といったような規制があることから、これらについて規制を緩和し、①については、商品の弾力化(扱える商品を増やす)、②相対取引のような事業者の判断で売買方法を取りきめられるような柔軟性、③事務手順を例えば事後報告にすると言ったような簡略化を図る、などを目的に、さらなる市場の活性化を図るため、平成23年4月1日から「地方卸売市場」に転換した。
 このような変遷をたどった甲府市地方卸売市場の取扱数量、取扱金額の変遷をみると、取扱数量では、平成9年までは10万トン前後で推移していたが、それ以降は減少傾向にあり、平成25年には約5万トンとなっている。また、取扱金額にしても、平成3年(約457億円)までは右肩あがりの伸びで推移していたが、それ以降は減少傾向にあり、平成25年には約184億円となっており、取扱数量、取扱金額ともピーク時の半分以下の水準となっている。

(図1)取扱数量の変遷

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(図2)取扱金額の変遷

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これら要因としては、

  • 山梨県の総人口が、平成13年の約89万人をピークに減少傾向が続いており、平成25年10月には約84万7千人[2]となっている。さらに、本県の総人口に占める65歳以上の高齢者割合は6%(年少人口0歳~14歳:12.7%)であるなど、少子高齢化により需要が減少したこと。
  • 少子高齢化の進行や共働き世帯、単身世帯の増加など社会構造の変化やライフスタイルの変化にともない、家庭において生鮮食料品等を調理・食事するスタイルが減少し、一方では外食産業の多様化や、冷凍食品や惣菜、レトルト食品等の中食の増加により、食の外部化が進展している。
  • 大型ショッピングセンター、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア等の台頭や農産物直売所や道の駅での直販や、インターネット通販、あるいは宅配サービスの普及等、消費者の購買方法は多様化している。それとともに、生産者との直接取引や外食産業による自社栽培が増し、さらに個人消費においても、インターネットを利用した全国のブランド食材・生鮮食品等の直接購入あるいは生活協同組合等が行う宅配サービスを利用するなど、卸売市場を経由しない市場外流通が増えてきている。

などの理由が考えられる。

 しかしながら、甲府市地方卸売市場にはⅠ食品流通の太いパイプ役として、新鮮で豊富な品物が迅速かつ衛生的・能率的に集荷・分荷される、Ⅱ法律等に基づく取引ルールによって、公正で効率的な取引が確保され、適正な価格が形成される、Ⅲ代金決済を明確にすることから、市場信用が向上し、充実した食料品の流通が図られる、Ⅳ消費者に対する多種適量な食料品の安定供給源となり、生産者には安心できる継続的な販売ルートが確保できるなど[3]本県民、甲府市民に対する食の安全・安心の担保、安定供給や、生産者への安心できる継続的な販売ルートの確保など、消費者、生産者に対して果たしている役割は大きい。特に、昨年度、山梨県を襲った豪雪時、甲府地方卸売市場が生鮮食料品の流通確保、商品供給に果たした役割は非常に大きかったことを本県民も記憶していることであろう。
 取扱数量、取扱金額が大幅に減少している中で、既に存在意義を終えているからと、市場を閉鎖してしまうと、上記のⅠ~Ⅳについては、どのような担保がなされるのであろうか。このようなことから、今後とも甲府地方卸売市場は、継続した運営が必要となっている。
 そのためには、甲府地方卸売市場の活性化を図るため、本稿「1.はじめに」に記した賑わいのある市場づくり施設の取り組みが必要となる。
 次にその施設について、市民ニーズなどを参照しながら求められる施設像を明らかにする。

3.賑わいのある市場に求められる施設像

 甲府市では、賑わいのある市場づくり事業の推進にあたり、甲府市民の市場に対する認識やニーズを踏まえ、甲府市民に開かれた賑わいのある市場づくりの推進を念頭に事業を進めていきたいと考えアンケート調査[4]を実施した。
 市民アンケート調査によると、甲府地方卸売市場で知っていることは、名前や場所、取扱品については割合が高いが、市場開放のイベントや市場外の東西にある専門店街の割合が低い。(図3参照)

(図3)市場で知っていること

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 また、市場利用経験に関する項目でも、各項目[5]とも未利用(行ったことはない)という割合が高い。(図4参照)

(図4)利用経験

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 しかしながら、来訪希望をみると、「甲府さかなっぱ市」53.7%、「市場外の東西にある専門店街」49.2%など、各項目とも約50%の来訪希望があることがわかる。(図5参照)

(図5)来訪希望

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 このように、市民アンケート調査では、甲府地方卸売市場の名前や場所は知っているが、市場開放のイベントや、市場外の東西にある専門店街への知名度は低く、実際に市場が利用できることを知らない市民が多いことがわかる。そのため、今回の調査で知ることができた市民が利用できる市場開放のイベントや市場外の東西にある専門店街等への利用希望の割合が高くなっていると想定できる。

※平成26年6月28日に開催された甲府さかなっぱ市では、悪天候(雨)にもかかわらず、過去最高の来場者数を記録している。市場関係者の積極的な情報発信、過去に来場した方々の口コミ等の影響が想定されるが、市場の商品に対する消費者のニーズがあるとも考えられる。

 次に、実際に甲府地方卸売市場を利用するとしたら、どのような店を利用したいかについては、「水産物」62.7%、次いで「青果」が39.0%となっており、水産物への利用希望の割合が高いことがわかる。(図6参照)

(図6)どのようなお店を利用したいか

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 甲府市地方卸売市場を利用したい理由は、「新鮮だから」が67.0%と最も多く、次いで「価格が安いから」44.2%、「品揃えが豊富だから」38.1%などとなっている。
(図7参照)

(図7)利用したい理由

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 次に、市場がどのような形なら利用したいかについては、「道の駅のような施設で青果、水産、地元の名産、食堂などを揃え消費者がいつでも利用できる」が49.6%と最も多く、次いで「現在の市場外に施設をつくり消費者がいつでも利用できる」が41.3%などとなっており、市民は市場開放の回数を増やすよりは、恒常的に利用できる施設を求めていることがわかる。(図8参照)

(図8)市場がどのような形なら利用したいか

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また、今後の市場に求めていることとして、

 ①情報発信(PR)をすべき:

  • 市場がどのようなところか知らない。一般消費者が利用できるという情報、イベントの内容や店舗情報、商品の内容等を情報発信(PR)するなど。

 ②新鮮で安価なもの:

  • 鮮度の良いものを安く。市場に来たらという期待もあるので、新鮮で美味しいものを安く食べたい(購入したい)など。

 ③市場らしさを出す:

  • 具体的には、築地場外市場のようなイメージ。対面販売による会話、食べ歩ける、市場にしかないもの(地場のもの)を販売するなど。

となっている。

 以上のように、甲府地方卸売市場、賑わいのある市場づくりには、市場らしさを出し、市民が恒常的に利用できる施設の建設が求められている。その中で、市場を知ってもらう工夫(情報発信)を行ったうえで、取り扱う商品としては、海産物、青果を中心に、市場という利点を活かした鮮度が良く、安いもの。また新鮮で美味しいものを安く食べられる食販店舗が求められている。

4.まとめ

 甲府地方卸売市場では、近年、取扱数量、取扱金額ともピーク時の半分以下の水準となっている。
 しかしながら、本県民、甲府市民に対する食の安全・安心の担保、安定供給や、生産者への安心できる継続的な販売ルートの確保など、消費者、生産者に対して果たしている役割は大きく、継続した事業運営が求められており、今後とも活性化のための取り組みが重要である。
 その中で、「賑わいのある市場づくり」の事業は、現在の市場用地の利用方法を見直す中で、活用できる用地を確保し、観光客や一般消費者に対して市場流通商品を販売する施設を整備し、「甲府市地方卸売市場のPR」、「新たな販売チャネルの開拓(新規需要開拓)」、「市場取扱量の増加」、「甲府市の新たな名所づくり」、「市場関係者による新商品開発や新事業創出によるインキュベーションの場」などを目指すものとし、このことで、甲府地方卸売市場の活性化や市場関係者の事業発展、行政コストの削減を図り、新たな集客の拠点施設とするものと期待されている。
 市民のニーズ[6]をもとに、この賑わいのある市場施設像をみると、市場らしさを出し、市民が恒常的に利用できる施設の建設が求められている。その中で、市場を知ってもらう工夫(情報発信)を行ったうえで、取り扱う商品としては、海産物、青果を中心に、市場という利点を活かした鮮度が良く、安い商品を販売する。また新鮮で美味しいものを安く食べられる食販店舗が求められている。


 

[1]甲府市地方卸売市場協会ホームページよりhttp://kofu-shijoukyoukai.jp/shijokyo/about.html

[2]人口に関する記載は、総務省統計局ホームページを参照している:http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2011np/

[3]甲府市地方卸売協会ホームページより:http://kofu-shijoukyoukai.jp/shijokyo/about.html

[4]甲府市 市民1,510人を対象に平成26年1月31日(金)~2月21日(金)の期間で実施した。有効回答数557、回答率37.1%であった。

[5]甲府市さかなっぱ市:3,6,9月の第4土曜日に市場を開放、開催。消費者感謝デー:11月の第3土曜日に開催

[6] 今回は市民ニーズのみを対象とした。これは、施設の継続的運営には市民の利用が重要だという視点からである。当然、観光需要に対しても分析は必要となる。次回以降の課題としたい。