人口減少と地域づくり


毎日新聞No.415【平成26年7月11日発行】

  最も確度の高い将来予測は人口推計である。国立社会保障・人口問題研究所によると、2040年には日本の人口は1億728万人、生産年齢人口は5,787万人となる。2010年と比較すると、それぞれ2,078万人、2,387万人の減である。山梨県では、2040年の人口は66万6千人、生産年齢人口は34万3千人で、2010年と比較すると、19万7千人、19万2千人の減となり、県全体で甲府市の人口に相当する人口もしくは生産年齢人口が失われることになる。

  産業界や学識者などの民間組織である日本創生会議が5月8日に「2040年、日本では896の自治体が消滅する」といった衝撃的な予測を発表した。この試算は国立社会保障・人口問題研究所の人口推移データに基づき、地方から大都市圏への流出を前提とすると、「20~39歳」の若年女性が地方から大都市圏に移動することによって、出産が可能な人が減少するため、多くの自治体では従来の予測以上に人口が大幅に減少すると指摘。
  若年女性が2010年から30年間で5割以上減る自治体は社会保障の維持が困難となる「消滅可能性都市」で、全国1800市町村の48.8%の896自治体が該当する。そのうち2040年に人口が1万人を切る「消滅の可能性が高い自治体」が全体の約3割の523自治体。ちなみに、県内27自治体のうち16自治体が消滅可能性都市、その中の7自治体が消滅の可能性の高い自治体としてリストアップされている。
  国土交通省の試算では2050年になると全国の66%の地点で人口は半分以下になり、2割は人がいなくなる。また、人口が増加する地点は全国の2%以下で東京圏と名古屋圏に多く、人口の低密度化と地域的な偏在が同時に進行するとしている。国土交通省は試算に基づき、国土整備の基本方針を示す「国土のグランドデザイン」を策定。地方では日常生活に必要な施設を集積した小さな拠点の形成や、コンパクトな都市に向けた再整備などを行うこととしている。

  遊休農地、空き家、限界集落、老朽化する公共施設やインフラなどの問題が顕著となるとともに、自治体財政も厳しくなっている。コンパクトな効率的な都市づくりや地域づくりを目指すためには、私権の制限や法的見直しも必要である。人口減少社会を前提とした福祉・教育計画、都市計画、土地利用計画などの改革に取り組むことが求められている。

(山梨総合研究所 調査研究部長 中田 裕久)