ユネスコエコパーク正式承認


毎日新聞No.416【平成26年7月25日発行】

  6月11日、スウェーデンで開催された第26回MAB国際調整理事会において「南アルプスユネスコエコパーク」が正式に登録承認された。関係者のご努力に心から敬意を表した。
  思い起こせば、高度経済成長のころのことである。山梨が内陸工業基地とはやされ、工業団地が開発され、企業が次々と進出したころである。「広域関東圏産業活性化センター」(GIAC)の一つのプロジェクトとして南アルプスを乱開発しないための方策を考えていくべきではないかと提案させていただいた。GIACは、国・地方銀行・大手企業など28の機関で構成する広域関東圏の経済発展を目指した機関である。早速、どんな開発が予定されているか。山梨・長野・静岡3県の関係市町村や企業を訪問しヒアリングさせていただいた。

  あれから30年近く経った。時代は変わり、人口は増加から減少に転じ、人々の価値観は経済優先から環境重視へと大きく変わってきた。そうした中で、南アルプスの関係市町村等が「高い山、深い谷がはぐくむ生物と文化の多様性」という理念の下に結束しエコパーク登録を目指してきた。
  エコパークには3つの区域が設定されている。一つは、「核心地域」で、厳正な自然保護をする特別保護地域にあたり、標高2800m以上に位置する地域である。一つは、「緩衝地域」で、核心地域と移行地域の間に位置する区域で、環境教育やエコツーリズムなどの利活用を可能とする地域である。もう一つは、核心地域・緩衝地域を大きく取り巻く「移行地域」で、人間の生活と自然が共存している地域で、持続可能な産業や環境に配慮した農水産業、観光や野外活動などを可能とする地域である。

  以前、地域づくりの研究会でウイーン市役所を訪問したことがあったが、説明に立った市の職員の第一声“ウイーンにはアルプスがあります”は今でも強烈な印象であった。「森の国・水の国」といわれる山梨に住んでいると、とかくそのありがたさを忘れがちであるが、アルプスの森に育まれた水や清浄な空気はまさに神からの贈り物である。
  ユネスコエコパーク承認はスタートである。自然の恩恵を生かし、魅力ある地域づくりを目指していきたいものである。

(山梨総合研究所 副理事長 早川 源)