空き家を減らさなければ


毎日新聞No.417【平成26年8月22日発行】

  人が住んでいない空き家の住宅総数に占める割合が、平成15年、平成20年の調査に続き、平成25年に実施した今回調査でも22.0%で全国トップとなった。しかも、着実に上昇している。
  ちなみに、2位以下をみると、愛媛、高知、徳島、香川、鹿児島と続いている。いずれも、首都圏から遠方の県である。こうした自治体を差し置いて、首都圏に隣接する山梨が空き家率で3期連続トップである。
  空き家が増えている要因のひとつは、人口の減少だろう。自然減だけでなく、平成13年以降は県外への人口流出も続いている。また、中古ではなく新築住宅を選ぶ県民の「新しもの好き」も影響しているのかもしれない。

  空き家の増加は、さまざまな機会に論じられているとおり、景観面や治安・安全面だけでなく、資源の有効活用の面においても問題が大きい。現状では、人が住んでいなくても、住宅が存在していれば固定資産税の優遇措置が受けられるため、住宅を撤去しない。このため、所有者が管理を実質的に放棄し荒れ放題となっているケースも多い。
  これまでは、国民の資産形成の支援や関係業界の業績向上を通じた経済成長の観点から、住宅建設による社会効用の追求を図ってきた。しかし、今後住宅需要の減少が見込まれる状況では、政策転換をしていかなければならないだろう。
  実質的に管理を放棄しているケースでは、一定期間経過後に所有者の意思に関係なく自治体が無償で所有権を取得し、取り壊し費用を請求する仕組みを導入することが必要ではないか。税制も、管理が放棄されているケースでは保有コストを引き上げて、流動化を促すように変えていくことが望まれよう。

  空き家が増えることは、地域コミュニティが崩壊することでもある。空き家は限界集落だけでなく、市街地中心部にも増えている。ひとつの対策として、相続人が市街地中心部にある被相続人が有していた中古住宅に転居するようなケースは優遇措置を検討したらどうか。現在住んでいる住居が空き家になり総体では空き家は減らないが、住んでいた住居が中古市場に供給されれば、長期的には空き家の抑制につながる。
  公共インフラや公共施設と同様に、住宅もストック量の適正化に向けて真剣に議論していかねばならない時期を迎えている。

(山梨総合研究所 専務理事 村田 俊也)