モノのインターネット
毎日新聞No.418【平成26年8月22日発行】
スマホを含めた携帯の世帯保有率は95%に達し、パソコンも80%前後で推移している。多くの人にとって、インターネットに接続してメールをやり取りしたり、情報を得たりすることは身近なものになった。
次の段階として、モノのインターネットということが言われている。考え方としては、10年以上前から言われていることであるが、物体や設備などのあらゆるモノがインターネットに接続するようになることを指している。ゲーム機やテレビなどのスマート家電に始まり、東大で実際に建設されて研究がすすめられているスマートビルなど、様々な分野で取り組みが始まり、実際にネットワークに接続されている。
自動車の分野も盛んに取り組みが行われている分野のひとつといえる。車自体がセンサーとなって様々な情報を蓄積して、交通の安全性を向上させたり、利用者の利便性を高めたりするための研究がすすめられている。また、アメリカの事例であるが、電気自動車メーカーのテスラモーターズは、自社で販売しているすべての自動車に通信機能を備えている。そのため、不具合の解消や機能向上のための対策の一部を、通信機能を利用したソフトウェアの更新で対応しているそうだ。
このような取り組みはその車両を所有している人に有益であるとともに、緊急時などに社会全体に還元することができる。2月に山梨県を襲った大雪の際には、各自動車メーカー等が中心になって、自動車からネットワーク経由で集められた情報を提供する試みが行われた。
例えば、各車両が搭載している通信可能なカーナビから、どの道路が通行可能だったかの情報を集約して、インターネットを通じて必要な人が参照可能とした。これによって県内をどのように移動することが可能なのかを事前にある程度判断することができ、大雪で混乱していた交通状況の緩和に役だったのではないだろうか。
全てのモノがネットワークにつながることで、情報は大きく膨れ上がっていく。この情報をうまく活用できれば、生活はより便利に、より安全になる。今後も、そのような取り組みを注視していきたい。
(山梨総合研究所 主任研究員 進藤 聡)