Vol.193-2 人口減少社会(1)


 【山梨総合研究所 主任研究員 進藤 聡】

1 はじめに

 5月に増田寛也元総務大臣(元岩手県知事)が座長を務める日本創成会議が「ストップ少子化・地方元気戦略」を発表した。そのなかで、出産を担っている20歳代から30歳代の女性の人口を「若年女性人口」と定義し、その動向に着目し、独自の推計を行っている。そして、若年女性人口が26年後の2040年に50%以下になる市町村を消滅可能性都市とした。
 これは、「消滅」という刺激的な言葉に加えて、若い女性がどの程度減少するかを数字として示したため、全国の自治体に衝撃を与えた。本研究においては、前半で人口減少がどのように推移していくと考えられているのか、また少子化の要因としてどのようなことが考えられるのかについて整理を行い、後半で日本創成会議が示した推計についての分析や、人口減少社会への対応策について考察を行う。

2 人口推計 ~これから人口はどのように推移するのか~

 図1は2012年までの全国の出生数・合計特殊出生率[1]・人口置換水準[2]の推移を示している。出生数は、戦後の第1次ベビーブーム期(1947年~1949年)の子ども世代にあたる第2次ベビーブーム期(1971年~1974年)において増加がみられたものの、その後は減少を続けている。第2次ベビーブーム末期の1974年には、合計特殊出生率は人口置換水準を下回り、以降40年間にわたって下回ったまま推移している。

図1 出生数・合計特殊出生率・人口置換水準の推移

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出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」

 総務省が発表している日本の総人口の推計によると、第2次ベビーブーム期を頂点にして日本の総人口の増加率は減少し続けており、2010年(平成22年)以降は毎年20万人以上の人口減となっている。合計特殊出生率が人口置換水準を下回ってから、ひと世代以上が経過し、いよいよ人口減少が始まったと言うことができる。

図2 総人口の人口増減数及び人口増減率の推移(昭和25年~平成25年)

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出典:総務省「推計人口」

 山梨県における出生数の推移をみると、全国と同様に戦後の第1次ベビーブーム期には年間25,000人前後で高い水準だったが、その後は減少している。1966年の丙午(ひのえうま)の年に急激に減少するものの、第2次ベビーブーム期に再び増加した。しかし、山梨県の場合には、丙午の急激な減少からの回復はあるものの、全国のような第2次ベビーブーム期における顕著な増加は見られない。
 人口については、1966年以降は緩やかに増加を続けていたが、1999年に頂点となり、以降は人口減少に転じている。最新の2014年8月1日現在の推計人口では840,774人と推計されており、上記グラフの最終時点である2012年10月1日現在からさらに1万人以上減少している。

図3 山梨県の出生数・総人口の推移

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国統計資料等から山梨総研作成

 このような出生数の減少、合計特殊出生率の低下が進んだ結果、日本の人口は、国立社会保障・人口問題研究所の中位推計によると、2010年の1億2,806万人が、2030年には1億1,662万人、2040年には1億728万人まで減少し、2060年には8,674万人になると見込まれている。
 山梨県の人口についても、減少が見込まれており、同じ国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2010年の86万人が、2030年には74万人、2040年には67万人まで減少すると見込まれている。

図4 将来の人口(全国・山梨県)

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国立社会保障・人口問題研究所資料から山梨総研作成

 人口の減少は、単純に人が減るだけではなく、同時に人口構成の変化をもたらしている。山梨県の年齢別の人口構成の推移をみると、2010年に13.4%を占めていた年少人口(14歳以下)は、2040年には9.8%にまで減少し、一方、高齢者人口(65歳以上)は24.7%から38.8%まで増加すると見込まれている。
 全国的にも同様の傾向となっているが、2040年で比較すると、山梨県では高齢者人口の比率が全国より2.7ポイント高くなっている。山梨県の2035年の人口構成が2040年の全国の人口構成とほぼ同じであり、現在と同様に、全国に比べて5年ほど高齢化が進んだ状態が続くと考えられる。

図5 年齢別人口構成の変化

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国立社会保障・人口問題研究所資料から山梨総研作成

 市町村別に2010年と比較して2040年にどの程度人口が増減しているかを計算すると、県内では昭和町が1.1%の微増となった他は、全ての市町村で減少する。

図6 市町村別の人口増減率(2010年~2040年)

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国立社会保障・人口問題研究所資料から山梨総研作成

3 子育て世代を取り巻く環境 ~少子化の主な要因~

 少子化は様々な要因が複合した結果として表れている現象と考えられている。主な要因としては、晩婚化・非婚化の進展、夫婦の平均理想子ども数と平均予定子ども数の差異、就労環境の問題等が挙げられる。
 婚姻の状況について、図7と図8で国勢調査の結果に基づいた平均初婚年齢と生涯未婚率[3]の推移をみると、ともに上昇しており、晩婚化・非婚化が進展している。特に男性の生涯未婚率は2000年以降大きく上昇しており、20%近い水準となっている。
 また、図9に示したように、晩婚化に伴い、第1子の平均出生時年齢も上昇しており、1975年には25.7歳であったのが、2010年には29.9歳まで上昇した。

図7 平均初婚年齢の推移

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国統計資料等から山梨総研作成

図8 生涯未婚率の推移

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国統計資料等から山梨総研作成

図9 母の平均初婚年齢と平均出産時年齢の推移(全国)

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国統計資料等から山梨総研作成

 実際に結婚して子どもを出産した場合も、希望している子どもの数と実際に生む子どもの数の間には差異がある。国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」によると、理想とする子どもの数と予定する子ども数(現在の子どもの数とこれから生む予定の子どもの数の合計)の間には0.4人程度の差異がある。
 理想の子ども数を持たない理由としては、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が60.4%と圧倒的に多くなっている。次いで「高年齢で生むのはいやだから」が35.1%となっている。その他には「欲しいけれどもできないから」、「健康上の理由から」などの理由も挙げられている。

図10 理想子ども数と予定子ども数

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出典:国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」

図11 理想の子ども数を持たない理由

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出典:国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」

 図12は、女性の年齢別の労働力率[4]の推移を示している。結婚・出産期となる20歳代~30歳代に一旦低下し、その後育児が落ち着いた時期に再び上昇しており、いわゆるM字カーブを描いている。しかし、その谷の部分が年々浅くなり、右側に移動している。
 これは、平均出生時年齢の上昇とともに、要因としては様々と考えられるが、結婚や出産を機に退職する女性が減少していることを示している。そのため、子育てと就労の両立が困難な場合には、子どもを産むことをためらってしまうということが考えられる、

図12 女性の年齢階級別労働力率の世代による特徴

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出典:内閣府「男女共同参画白書 平成25年版」

 

 以上、これから人口がどのように推移するのかという点と少子化が進んだ要因について概観をした。後半では、日本創成会議の提言の内容を中心に、人口減少社会が抱える課題と対応の方向性について考察を行いたい。

○主な参考資料

  • 総務省「人口推計(平成25年10月1日現在)」
  • 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月)」
  • 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成25年3月)」
  • 国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」
  • 日本創成会議「ストップ少子化・地方元気戦略」
  • 内閣府「男女共同参画白書 平成25年版」

[1]合計特殊出生率:一人の女性が一生に産む子どもの平均数

[2]人口置換水準:人口移動が無い場合に、人口規模が一定となるような出生の水準

[3] 50歳時点での未婚率

[4] 15歳以上人口に占める労働力人口(就業者+完全失業者)の割合