追いかけようぜ!


毎日新聞No.422【平成26年10月17日発行】

 私の地元は甲府市北部の小さな町である。正面真近に南アルプスの山々が連なり、先端の峠からは甲府盆地が眼下に広がる。その先に富士山がそびえ、あちらこちらに先祖たちが生きてきた証が色濃く残っている。400年を超える棚田では今も米作りが行われ、地元の有志が中心となり活性化に向けた活動をおこなっている。

 「地方創生」。政府は「まち・ひと・しごと創生本部」を開設した。本部長に首相、副本部長に担当大臣と内閣官房長官、本部員には他のすべての国務大臣という政権オールスタッフの布陣で、縦割り行政の思考を排除するべく、各省庁からの出向者が脇を固めている。基本目標に「次元の異なる大胆な政策を中長期的な観点から、確かな結果が出るまで断固として力強く実行していく」と。意気込みが伝わってくる。  大きなきっかけは5月に日本創成会議が提言を行った、人口減少社会の未来予想図であろう。個別名を挙げての消滅可能性都市というショッキングな表現は、いろいろな議論を引き起こしたが、方々のお尻に火を付けるには有効であった。雇用の問題が東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)への若年層の人口流出を惹起し、晩婚化・晩産化が進み、人口減少が拡大する。政府はその解を「地方創生」という言葉に込めた。  具体策は未だ見えてこないが、1.地域の特性を尊重した魅力あるまちづくりを進め、地方における就労機会を拡大する 2.それにより人口の一極集中を是正する 3.結婚・出産の支援を行う というのが方向性であろう。もちろん政治的な思惑も見えてくるが、それも含めて福となれば歓迎である。

 巨大な物体を軌道修正するのは容易ではない。担当大臣は「やる気のある自治体は応援する」と、自治体との連携を提唱している。確かな結果を得るには、特徴ある小さな地域に焦点を当て、資源を集中することが必要であり、当事者同士の密なる連携が不可欠である。「やる気のある人たち」が広く外部と交わり、強い信念のもと可能性を追いかける姿が全国で見られることを期待している。
 全国で動き始める「地方創生」。小生も小さな歯車の価値を証明したいと考えている。

(山梨総合研究所 主任研究員 末木 淳)