来季も頑張れヴァンフォーレ甲府


毎日新聞No.425【平成26年11月28日発行】

 サッカーJリーグ、ヴァンフォーレ甲府(以下甲府)がJ1残留を果たした。2季連続で降格を免れたのはクラブ史上初めてであり、来年は3季連続してJ1の舞台で戦うこととなる。まずは健闘を大いにたたえたい。今季のJ1各チームは、Jリーグの歴史に彩られた名門チームが並んでいる。日本代表レベルの選手を擁するクラブであったり、クラブ予算規模もホームタウンの人口規模も甲府とは比較にならないほどのビッグクラブがひしめく。シーズン開幕前の甲府は徳島と並びJ2降格候補の1,2番手に位置していたであろう。今回も順位を上位に上げることはできず、常に残留争いの渦中にはいた。しかし残留争いの渦中にはかつてJリーグでタイトルを勝ち取ったチーム、開幕前には優勝候補に挙げられていたチームや、トップリーグで何シーズンもの間に渡って常に残留争いの渦中の中で残留を勝ち取るチームもいる。その中で甲府は、堅守即攻をモットーに全員で守り、チャンスには一気に攻めるスタイルを確立しビッグクラブからも勝ち点を奪ってきた。
 その戦い方はいわゆる美しいものではないが、各選手が与えられた立場の中で最大限の努力をし、耐えて、泥臭くプレーするスタイルを確立した結果、最終的にJ1残留を勝ち取った。地方の弱小チームであっても、また日本代表クラスの選手がいなくとも、大都市にチームをかまえ、予算も豊富にあるビッグクラブ相手に戦い抜いてきた。この甲府のプレースタイルは、まるで本県社会・経済の戦い方(進む道)を示しているようだ。

 本県は、予算規模も小さく、人材も限られている。大都市圏から見ると知名度も低く、地味な存在この上ない。その本県が大都市圏を相手にして戦うには、地方都市ならではの戦い方がある。選手(企業)が個性を伸ばし、フロント(関係各機関、支援団体)とサポーター(県民、熱狂的支援者)との密接な連携を通じ地道に当たり前の努力を通じ泥臭く取り組みを進めながら素材を磨き、勝負するしかない。その結果として、全国でトップにならなくともマークされる存在であり続ける、それが本県の戦い方(進む道)であろう。
 来シーズン、甲府はJ1でも警戒される存在として、今季以上の厳しい戦いが待っているだろう。対戦相手が研究してきた中でどのような戦い方をするのか非常に興味がある。そこに地方都市の生き方の手本が隠されている。そんな気もしている。

 来季も頑張れヴァンフォーレ甲府。

(山梨総合研究所 主任研究員 古屋 亮)