医療・健康産業と政策
毎日新聞No.426【平成26年12月12日発行】
21世紀の現在、「人口減少・低成長・模倣できるモデルがない」時代となり、少子高齢化、社会保障制度、エネルギー、都市インフラなどが絡み合った諸課題を自ら解決せざるを得ない状況となった。
その課題の一つが医療・福祉・健康分野である。先月、病院・福祉施設展を視察したが、医療機器、リハビリ・健康、院内感染対策、介護ロボット関連のほかIT、建築・設備などあらゆる産業からの出展があった。
他業種の参入例では、ある著名なオフィス家具メーカーは診療用の椅子を紹介し、製菓メーカーは菓子製造プラントの日々の滅菌のために自社開発した電解水装置を展示していた。また、物流企業は医療廃棄物の滅菌処理システムについて、感染性廃棄物を滅菌、消毒後の容器を病院に返却することで、20%以上の資源削減ができるとPRしていた。
ある医療機器メーカーは小型の血糖自己測定器を出展していた。軽度な糖尿病や予備軍が自己管理に利用できれば、成人病対策に効果が期待できるのではないかと思われる。大学発ベンチャー企業の呼吸モニタリング装置は、直接触れずに新生児の呼吸機能を調べることが可能なようで、無呼吸症候群などの検査に活用できそうだ。
介護は前屈姿勢が多く、腰に負担がかかる。その解決策がサポーター及び介護ロボットの活用である。産学連携の共同開発による腰部サポートウェアーは、介護をはじめ家事、子育て、美容院スタッフなど中腰姿勢の働く女性を支援するために市販されるようである。ロボットスーツHALは以前より格好がよくなった。これは介護支援とともにリハビリの効果があるとされ、日本では現在各地で試験中である。
ちなみに、ドイツでは昨年夏に世界ではじめて医療機器の認証マークを取得した。これによって欧州では本格的に臨床試験が可能となり、ドイツの労災保険の適用対象となった。今年度、ロボットスーツを用いたドイツ人医師たちの研究がドイツ労災病院主催の賞を獲得したとのことである。
ロボットスーツのように日本の発明がいち早くドイツで認証され、保険対象となっていることを喜ばしいと思う一方、なぜわが国で普及しないのか、政策の違いを感じた。
(山梨総合研究所 調査研究部長 中田 裕久)