長寿社会に欲しいもの


毎日新聞No.427【平成26年12月26日発行】

 増田寛也編著「地方消滅」(中公新書)を読みながら、以前、当コラムに「第三の居場所」というタイトルで寄稿したことを思い出した。少し長くなるが引用してみたい。「JR甲府駅の北口から英和高校方面へ向かうと藤川のたもとに「瀬戸」という茶房があった。この店の主人は、ウーロン茶にこだわっていて、豆を原料とするコーヒーはお茶ではないとメニューにない。お客様は比較的高齢の方が多くたまり場のようになっていて、ガラス越しに見える中年のご婦人や白髪の知的な男性たちの談笑する光景はなんともほほえましいものであった。 “「瀬戸」はお年寄りのサロンにしたいのです”と言っていたが数年前に店じまいして今はない・・・」。

 さて、「瀬戸」がオープンしてからかれこれ10年になるだろうか。現在日本の高齢化率は約25%、4人に1人が高齢者となった。平均寿命は84歳(男性80歳、女性87歳)、人生50年時代から見ると34年も延びたことになる。高齢社会というと、なんとなく暗いイメージになりがちであるが、しかし、人生90年ともいえる長寿社会で新たに増えるのは元気な高齢者ではないだろうか。
 これまで、家庭という「第一の居場所」と職場という「第二の居場所」があった。ところが引退して「第二の居場所」が無くなり、改めて「第二の居場所」の有形・無形の価値の重要さに気づくことになる。社会学者レイ・オルデンバーグは「第三の居場所」が社会的に重要な機能を担っていることを指摘している。それは、喫茶店やレストランのような機能であり、コミュニティーセンターや図書館・クラブのような機能であり、シルバー人材センターのようなコーディネート機能である。
 某調査機関によると、高齢者の市場規模は現在100兆円、今後も毎年1兆円ぐらい増え続けると推計している。長寿社会を楽しみたいという市場はこれから拡大するばかりである。さらに、経済的な側面だけでなく、「孤独死」や「無縁社会」など人間関係の希薄化解消につながれば自立期間の延長も期待できる。

 長寿社会のまちづくりはこれからである。賑わいの求心力を失ってしまった中心市街地は長寿社会を楽しもうとしている客層に何を提供するのか。どのような「第三の居場所」を用意するのか、大いに議論するときではないか。

(山梨総合研究所 副理事長 早川 源)