VOL.57「15」
今年は「15」から目が離せない。広島東洋カープ、黒田博樹投手の背番号である。ビッグクラブからのオファーを断り、古巣へと舞い戻る決断はファンならずとも多くの人々の琴線に触れ、連日マスコミでも取り上げられた。
球団の営業面においても効果は大きく、年間指定席(8,300席、販売価格98,700円~367,500円)は1月20日に完売(昨年の販売数6,300席、広島市民球場時代を含めても初めてのこと)し、3月29日(日)、黒田投手が先発した開幕第3戦の平均視聴率(広島テレビ・生放送)は34.9%であった。ここ数年、カープ女子なる言葉も生まれ、注目度が上がっているところに「15」の復帰である。今年はプロ野球界に「赤い旋風」が巻き起こる気配大である。
原爆投下の壊滅的被害からの復興を目指して設立された広島東洋カープ(設立時は広島カープ)はその後も市民球団(特定の企業に依存しないという意味で)として地域の人々に愛されながら歩み続け、プロ野球球団の中でも独特の存在感を示している。
シーズンは始まったばかり。「15」の復帰が美談に終われない厳しさが待っているのも事実である。原爆投下から70年の節目にあたる今年、黒田投手の「自信と勇気の決断」が秋に歓喜へと繋がることを期待したい。
(主任研究員 末木 淳)