人と動物の共生
毎日新聞No.437【平成27年5月15日発行】
Twitter等で拡散され、スマホ向けアプリ「ねこあつめ」の人気が拡大している。
仮想の庭に餌やボールなどを置き、猫が来るのを待つだけ。やって来た猫を眺めたり、撮影したりする。猫が好みそうなダンボールや座布団などを置き、庭先を充実させてさらに猫を集めると、40種類以上の猫がやって来る。
開発しているのは、京都市にある株式会社ヒットポイントであるが、その京都市では今年3月、「京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例」を制定し議論を呼んだ。
この条例の目的は、不適正な動物の取扱いに起因して人に迷惑を及ぼすことを防止し、もって生活環境の保全を図るとともに、人と動物の共生する社会の実現に資すること、とある。その目的のために、所有者等の責務や市の責務、市民等の責務があり、飼い犬のふんの回収義務や不適切な給餌の禁止等を罰則付きで定めた。
京都市がこの条例を制定するに当たってパブリックコメントを実施したところ、条例への批判や疑問が多数寄せられたことが新聞等で報道された。さらに、「無責任な餌やりの禁止」が「餌やりそのものの禁止」と拡大解釈されSNS等で話題となり、本来の条例の趣旨とは異なる内容の批判が多かったように思う。誤解を招いたとして、条例の名称も当初「動物による迷惑等の防止に関する条例」だったものが「動物との共生に向けたマナー等に関する条例」に改められた。
京都市は2010年度から、まちねこ活動支援事業として、野良猫を「まちねこ」にして地域で世話をしようという活動を行っている。この事業でも「人と猫との住みよいまちづくり」として、人と猫が共生できる社会を目指している。
「ねこあつめ」アプリに登場する猫が、野良猫なのか「まちねこ」なのかは不明であるが、現実世界では、飼い猫と野良猫の境界、適切な餌やりと不適切な餌やりの境界のあいまいさが問題となることが予想される。
数年前に、足を怪我している子猫の野良猫を保護した。幸い、室内で飼うことができたので飼い始めたが、その後も拾ったりもらったりした結果、我が家には現在3匹の猫がいる。リアルねこあつめ、そろそろ経済的に厳しくなってきた。
(山梨総合研究所 研究員 高橋 謙洋)