VOL.60 「27人」


 サッカー女子ワールドカップがいよいよ最終盤である。今大会も「なでしこ」の戦いぶりに多くの方が歓喜し、熱い声援を送っていることと思う。先日対戦したオーストラリアは、強豪揃いのグループDを勝ち抜き、決勝リーグでは優勝候補の一角とされたブラジルに快勝、底知れぬ強さを見せ始めた相手であった。結果は快勝である。
 試合後の選手インタビューなどを聞くと、驚くほどにゲームプランをしっかりと組み立て、試合中は相手を冷静に見て、着々とゲームを作っていた姿が浮かび上がる。試合を読み、流れの中で柔軟に対応する。「知性」がなければ成し得ない姿である。敗れたオーストラリアのスタジック監督は、”ボールを追うのに体力を使ってしまった”と、「なでしこ」の術中にはまってしまった様子をコメントしている。1-0以上にピッチの上では大差が付いていたようである。
 いろいろな競技の中で選手たちからは「自分たちのサッカー」とか「自分のテニス」といった「自分(たち)の○○」という言葉を耳にする。相手に負けないための「個」の確立である。それを裏付けるものは、技術であり精神力である。
 「なでしこ」は08年の北京五輪・11年ワールドカップ・12年ロンドン五輪に続き、4大会連続して国際大会で4強入りを果たしている。強豪になればなるほど相手からは研究され、試合では強いモチベーションを持たれて挑まれる。「技術」と「精神力」は日々の鍛錬に宿り、「知性」は多様性に宿る。と、想像してしまう。選手23名、コーチングスタッフ4名の27名から目が離せない。

(主任研究員 末木 淳)