Vol.203-1 山梨の将来像をつくるために


203-1-1

【山梨経済同友会 代表幹事 入倉 要】

1.はじめに

 先日(5月23日)、経済4団体共催による「地方創生」をテーマにした特別講演会を開催させていただきました。会社経営者や県・市町村職員、県議や代議士、総人数で450名の方々にご来場いただき、関心の高さとまとまりを県内外に発信出来ました。共催4団体は設立時期も目的も活動もそれぞれ異なっていますが、後発団体ながら多彩な活動を行っている山梨経済同友会についてご紹介させていただきたいと思います。

2.理念(設立趣意書をもとに)

 山梨経済同友会は平成9年9月24日に産声を上げました。当時は21世紀を目前に控え、国内外における、規制改革と行財政改革、そして情報技術革命といった環境変化を如何に山梨県経済の発展に結び付けるのか、どうすれば県民にとって住みやすく、また、国内外からの来県客が何度も足を運びたくなる魅力ある地域づくりが実現するのかというテーマにつき、人任せではなく、県民一人ひとりが主体的に考え、議論し、行動する必要があるとの問題意識の下、経済人が英知を結集し、業種や組織の個別の利害を超え、山梨県全体の発展を考え、はっきりした方向性を打ち出す必要(政策提言)があるとの認識から、こうした課題を担う経済団体として設立されました。
 以前から四半期に1回、日本銀行に集まり、マクロ(日本経済、世界経済あるいは山梨県経済)について意見交換をしていました。このフォーラムの輪に多くの方々に加わって頂こうという機運が盛り上がってきて山梨県における経済同友会設立に至りました。

3.各県の経済同友会の特徴と関係

 終戦直後(昭和21年)に経済同友会(東京)が「同志相引いて互に鞭ち脳漿をしぼって我が国経済の再建に総力を傾注すべき秋(とき)」として設立されてから、全国には北海道から沖縄まで(茨城、長野を除く)、経済同友会が44団体設立されています。各県の経済同友会は、経済人として、日本経済の持続的成長に寄与するとともに、地域のより良い経済発展と経済社会の実現、国民生活の安定のため、諸課題に率先して取り組んでいます。
 経済同友会の特徴は、個別利益実現を図る組織ではないということです。マクロ的かつ中長期的な観点から広く産業・経済を学び、議論し、提言し、かつ行動していく事を目指す組織です。上部団体は存在しません。互いに協調・連帯の関係にあり、全国セミナーや、代表による円卓会議あるいは地域的なブロック会議などにより広域的な経済問題に取り組みます。また、大きな特徴としては、会員の会費のみで運営される、いわばボランティア組織の民間版シンクタンクであるということです。自由に発言し、自由な活動をするためにも純粋に民間の組織となっています。会員は、企業単位の加入ではなく、あくまでも経済人・企業家個人としての加入となっています。

4.山梨経済同友会の行動原則と委員会組織

(1)行動原則

 山梨経済同友会の特徴として、次のような行動原則を定めています。

  1. 個別利益を超え、マクロの観点から山梨県経済の持続的発展を考える
  2. 既成の概念にとらわれることなく、常に新しい目で時代の流れを見極め対応する
  3. 年齢・性別・地位・所属する企業規模に全く関係なく自由に意見を述べ、オープンに議論する
  4. 生活者、消費者としての県民の意見に耳を傾け、県民とともに学び議論する
  5. 考え、議論するだけではなく、行動する

(2)委員会組織

 山梨経済同友会には会員が所属する各種の委員会を設けています。
 委員会は同友会の目的達成に必要な事項を調査・研究・立案・審議するために、業種別ではなく、テーマ別となっています。委員会は組織を代表する複数の代表幹事(任期は2年)と幹事で構成する幹事会の指示により設置されます。現在設置されている委員会の名称と目的は次の通りです。

 ①山梨リニューアル委員会

  • おもてなし部会………… 文化行政への提言
  • リニア部会………………… 2次交通の県内一体化の研究、提言
  • 富士山部会………………… 富士山の環境保全と均衡ある経済発展の研究、提言

 ②どうする!山梨特別委員会

  • 県民の声・意見収集、会員の広域交流、観光推進、出前授業の具体的活動
  • 人口減少問題と地方創生への具体的活動

 ③新DCTP特別委員会

  • 20年後の山梨のあるべき姿に向けた提言
    (※「DCTP」とは、(Dreams Come True Project)の略です)

④運営委員会

  • 知事、市町村長をはじめとする行政との意見交換会の実施

(3)歴代および現在の代表幹事

 これまで日銀の支店長様をはじめ様々な業界の立場の方が、同友会を代表する代表幹事をお引き受け頂いています。

住川雅洋

日本銀行

甲府支店長

平成9年9月~平成9年12月

岡島哲之助

㈱岡島

社長

平成9年9月~平成12年9月

長澤利久

㈱はくばく

会長

平成9年9月~平成15年9月

野口英一

山日YBSグループ

代表

平成9年9月~平成18年9月

出澤敏雄

日本銀行

甲府支店長

平成10年2月~平成11年12月

望月政男

㈱ラッキー商会

会長

平成15年10月~平成19年9月

望月操三

セコム山梨㈱

社長

平成15年10月~平成20年9月

細谷憲二

中央観光㈱

会長

平成17年10月~平成20年9月

小野堅太郎

㈱山梨中央銀行

会長

平成20年10月~平成25年9月

入倉 要

㈱イリックス

社長

平成20年10月~

飯室元邦

㈱YSK e-com

社長

平成25年10月~

5.これまでの提言および活動成果、今後の活動方針

 設立以来、委員会活動の成果として、県政に対する政策提言書を数多く首長へ手渡し発表してきました。そのうちいくつかは施策に採り入れて頂きました。また提言に基づき実際に事業活動を行っていくことも大きな活動と捉え、官民協働でなければ出来ないビッグプロジェクトにも挑戦し、成果を挙げてきました。

(1)これまでの提言書

 以下は、発表した時期とテーマ、委員会で中心となって頂いた方々です。

1998.10

山梨県の産業政策

(産業政策委員長 風間善樹)

1998.10

学校教育問題

(文化教育委員長 中丸眞治)

1998.10

山梨の観光・方向性

(観光委員長 舩木上次)

1999.05

21世紀の税制改革案

(税制特別委員長 出澤敏雄)

1999.08

農業復活のために

(産業政策委員長 風間善樹)

1999.09

甲府市財政再建のために

(社会システム委員長 上原勇七)

2001.09

市町村合併が未来を拓く

(社会システム委員長 上原勇七)

2004.10

甲府市中心市街地活性化

(県都活性化委員長 清田嘉一)

2004.10

観光活性化を目指して

(リニューアル委員長 細谷憲二)

2004.10

今求められる公立校制度改革

(教育問題委員長 田中好輔)

2004.10

荒川にお世話になろう

(環境委員長 竹内克雄)

2005.09

交流人口増加と県都活性化

(県都活性化委員長 伊良原龍夫)

2005.09

玄関口甲府駅の機能向上

(リニューアル委員長 細谷憲二)

2006.09

「風林火山」と地域活性化

(風林火山委員長 山本淳仁)

2007.09

道州制についての提言

(道州制検討委員長 伊良原龍夫)

2011.01

甲府グランドデザイン2010

(DCTP委員会座長 望月操三)

2011.09

リニアと山梨の方向性

(リニューアル委員長 小池雅彦)

2011.09

山梨県の明るい未来を目指して

(どうする山梨委員長 上原伊三男)

2012.07

国民文化祭への提言

(リニューアル委員長 小池雅彦)

2012.11

リニア開業までに県の活性化を

(リニューアル委員長 小池雅彦)

2014.12

人口減少で未来山梨はどうなる

(どうする山梨委員長 上原伊三男)

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■前知事との意見交換会

(2)これまでの事業活動(主要)

 これらの事業の多くは、委員会の提言に基づいて実行委員会を組織し、産・官・学・各種団体が一体となって協働して成し得たビッグプロジェクトも含まれています。

2004.12

光のピュシス

2007.01

甲斐の国「風林火山博」

2008.05

どうする山梨!テレビ討論会

2010.08

甲府駅北口「クリスタルアース」設置事業

2010.11

風林火山歴史ウォーク(~2012.11)

2012.11

創立15周年記念行事

2015.05

「地方創生を考える」特別講演会

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■甲府駅北口コンコースに設置したクリスタルアース

■風林火山歴史ウォーク告知チラシ

(3)今後の活動方針

 山梨経済同友会は、山梨の経済を牽引する経済人の集まりとして時代の流れを的確に捉え、その中でわが山梨の進むべき道をしっかりと見定め、打つべき手を着実に打ち、この山梨を後世にきちんと引き継ぐ責任を負っているものと考え活動して参りました。今現在も将来も山梨県全体の経済の活性化を願い、特に「人口減少社会における経済の推進、山梨らしい地域戦略」をテーマに委員会組織を充実させ、提言活動や事業活動を通じて山梨の将来像を作っていかなければならないと思っています。

6.どうする山梨! ~手遅れになる前に、地域戦略を~

 今、山梨県がおかれた現状を見ますと 、5年、10年先の県勢の発展に危機感を覚えざるを得ません。大企業の撤退に始まり、県内経済の停滞は出口が見えず、地価はバブル崩壊以降22年間下がり続け、空き家率も全国ワーストワン、さらに人口減少は全国平均より前倒しで進んでいるというたいへん深刻な状況です。一方で、富士山の世界遺産効果により世界に認知され、2年後の2017年に中部横断道南部区間が開通し、甲府~静岡間が2時間40分から1時間20分になり、5年後の2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、一部の競技開催地や合宿地、観客の宿泊地としての期待が膨らみます。さらに12年後の2027年にはリニア中央新幹線が開通し、甲府と品川が20分程で行き来できるようになります。このようにこれからの10年、山梨県はたいへん重要な時期を迎えるわけです。しかし、これらのビッグプロジェクトも、ただ待っているだけでは大きな効果を得ることはできません。これらのビッグプロジェクトを活かすために、郡内と国中を一体化した観光立県構想などの地域戦略である「山梨ビジョン」「山梨グランドデザイン」の策定が必要で、今のうちから準備をしていかなければ、効果どころか逆にストロー現象で人口減少を加速させ、それこそ「消滅自治体」をつくりかねません。人口が減り続ける社会は、これまでの経験や考え方が通用しない混沌とした社会の到来と言っても過言ではないでしょう。
 今こそ、わが郷土の持つ強みと弱みを直視し、何を改め、何を伸ばしていくかを見極め、10年後、20年後、さらにもっと先を見据えた、既成概念にとらわれない大胆な発想が求められています。産(民間企業・経済団体)・官(政治・行政)・学(大学&研究機関)そして地域住民が、持っているアイデアの「ベクトル」を合わせて「未来の山梨」を考え、行動を起こすべき時だと考えています。

7.さいごに

 現代は、既に国内外で熾烈な地域間競争の時代に突入しています。冷静な議論は欠かせませんが、その上でスピード感のある行動に繋げていかなければ地域の地盤沈下は止まりません。県民一人ひとりの参画を得ながら、産業界、政治、行政、学界が連携して、またマスメディアの協力も仰ぎつつ聖域のない議論を実践しながら立ち向かうことが求められていると考えます。
 今般、政府には「まち・ひと・しごと創生本部」が設置され、地方創生に向けた自発的な取り組みが求められています。この流れに乗り遅れないために必要なことは、先を見据えた政策であり、その政策を実行・実現するリーダーシップだと考えています。山梨経済同友会は、これまで以上に、首長を始めとする行政や関係機関に提言を行い、時には連携協働し行動を起こすことで、山梨の発展に寄与していきたいと考えています。