総合戦略と空き家対策


毎日新聞No.441【平成27年7月10日発行】

 現在、地方自治体では「人口ビジョン」と「地方版総合戦略」の策定に向け、検討を行っている。
 6月12日には、ローカル・アベノミクスの実現に向けた国の基本方針を示す「まち・ひと・しごと創生基本方針検討チーム報告書」が出された。この中で、地方にしごとをつくる、地方への新しいひとの流れをつくる、結婚・出産・子育ての希望をかなえる、まちづくり・地域連携といった目標について多種多様な案が盛り込まれている。
 地域産業の振興についてはイノベーション、ブランド化などを推進することとしている。今話題となっている「日本版CCRC」については、モデル事業の実施などに各種政策支援を行う。まちづくりについては、「コンパクトシティの形成」、「公共施設の再編・公有地の有効活用」、「空き家対策など既存住宅ストックの有効活用」、「中山間地域の小さな拠点の形成」などがあげられている。総合戦略では5年間で具体的施策を実施することとしているが、より長期的な抜本的な取り組みが必要と思われる。

 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では、総世帯数は2020年の5,305万世帯をピークに減少する。また、国土交通省の「住宅着工統計」では、2014年度の住宅着工戸数は88万戸で5年ぶりに減少に転じている。
 住宅・土地統計調査によると、2013年10月1日現在の総住宅数は6,063万戸で5年前と比較すると304万戸の増加。空き家数は820万戸、5年前に比べて63万戸の増加で、空き家率は13.5%である。野村総合研究所の予測によれば、既存住宅の除去や有効活用が進まなければ、2033年の総住宅数は7,100万戸、空き家数は2,150万戸、空き家率は30%に上昇する。
 5月27日に全面施工された空き家対策の特別措置法は、防災や衛生、景観などの面で問題をかかえる空き家について、市町村が「特定空き家」として認定すれば、撤去や修繕を勧告、命令できる他、行政代執行などにより強制撤去が可能となった。

 別荘等を除いた空き家率は山梨県の17.2%が最も高く、次いで四国4県が16%台である。総合戦略の中で、空き家や公共施設の有効活用や適正管理を検討し、人口減少社会を前提としたまちづくりに取り組むことが求められている。

(山梨総合研究所 調査研究部長 中田 裕久)