“もったいない”を合言葉に
毎日新聞No.446 【平成27年10月2日発行】
今夏の猛暑を始め、豪雨による大災害など、近年異常気象が深刻化している。こうした気候変動の問題解決に向けて取り組んでいくことは、喫緊の課題である。
我が国は、戦後、物質的・経済的な豊かさを追求してきた。その結果、経済が目覚ましい発展を遂げ、先進国の仲間入りを果たした。一方、その過程における大量生産・大量消費型経済活動は、多くの廃棄物を生じさせ、地球環境に大きな負荷を与え、地球温暖化に影響を及ぼしている。
環境省が2014年に実施した「環境にやさしいライフスタイル実態調査結果」によれば、「大量消費・大量廃棄型の生活様式を改めることは重要である」と考えている人は91.0%、「日常生活における一人ひとりの行動が、環境に大きな影響を及ぼしている」とした人は93.0%である。
大量消費・大量廃棄型の生活様式を改めるために、日常生活における私たち一人ひとりが行動できることとして、“モノを大切にする”ということが見直されるべきではないかと思う。
環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したケニア人女性、ワンガリ・マータイ氏は、2005年の来日の際に感銘を受けたのが「もったいない」という日本語だったそうだ。その言葉には、かけがえのない地球資源に対するRespect(尊敬の念)が込められているとし、マータイ氏はこの言葉を環境保護のためのキーワード“MOTTAINAI”として広めることを提唱したという。
また、「もったいない」の語源を調べると、物の本体(“勿体(もったい)”)を失することを表し、そこから転じて、「そのものの値打ちが生かされず無駄になるのが惜しい」という意味を持つのである。なかなか趣のある言葉ではないだろうか。
振り返ると、筆者は昔から、モノ持ちが良い方だ。携帯電話は所有期間10年、自家用車は11年である。目覚まし時計に至っては、購入してから既に32年の月日が経過している。様々な要因があるが、一つのモノを長期間活用する最大の理由は、使い続けると次第に愛着が湧き、手放すのが「もったいない」と思うからである。
「もったいない」という言葉で、少しずつでも環境問題に良い変化がもたらされることを切に願う。
(山梨総合研究所 主任研究員 安部 洋)