VOL.64 「48人から3,000人」


 身延町について話を聞くと、必ずと言っていいほど話題に上がるものがある。「あけぼの大豆」である。他品種と比較して糖分含量が多いので甘みが強く、コクがあり、粒が大きいのが特徴で、皆が口をそろえて「美味い」と言う。そこで、身延町で毎年行われている「あけぼの大豆収穫祭」に参加した。
 「あけぼの大豆収穫祭」は、身延町内7か所で行われるイベントで、事前に収穫用の袋を買い、決められた重さまで枝豆を収穫する。私が参加した会場は、一袋1,000円で1.5kgまで収穫することができた。
 塩ゆでにして食べたところ、シャキッとした歯ごたえと口に広がる甘みは病みつきになり、こんなに美味いものを知らなかったことを後悔した。また、枝豆としてだけではなく、炊き込みご飯にしたが、味の強さは変わらず、「あけぼの大豆」の素晴らしさを感じた。
 のちに聞いた話であるが、「あけぼの大豆の収穫祭」は平成18年に始まった当初、参加者は48人だったそうだ。それが、昨年の参加者は約3,000人となり、今年はさらに多くの参加者が収穫祭に来ているそうである。どんなに良いものでも、時間をかけて「名物」となっていくものだと感じた。もともと地元にある「名物」も、これから作りだす新たな「名物」も、価値を信じ長いスパンで取り組んでいかなければ、その価値を多くの人に伝えることはできないのかもしれない。成長途中のまま埋もれている「名物」が、身の回りにあるのではないだろうか。

(研究員 渡辺 和樹)