いいじゃん、ものづくり


毎日新聞No.450 【平成27年11月27日発行】

 下町ロケットといえば皆さんご存知、池井戸潤氏の直木賞受賞作品である。毎週日曜日に同タイトルのドラマが放送されているが、これをみて翌日からがんばろうと気持ちを奮い立たせている方も多いだろう。
 個性的な俳優陣の熱い演技も魅力のひとつだが、中小企業が舞台の「ものづくり」に対する日本人の強い関心も人気の要因ではないだろうか。最近も、国産初のジェット旅客機MRJの初飛行、ハンドルやブレーキ操作をしなくても走行可能な自動運転技術、人型ロボット「ペッパー」の販売開始等、様々な関心を集めている。また、官邸に落下し話題となったドローン(小型無人機)も農業分野や災害救助での活躍が期待されている。

 先日訪問したある会社で、3Dプリンターの話題となった。
 3Dプリンターといえば、アメリカのオバマ大統領が「あらゆるものづくりに革命をもたらす。」と演説したことで日本でも話題となり、また3Dプリンターによる銃の製造事件では、そんなものまで造れるのかと、すごそうだけど何だか恐ろしいものだと感じたことを思い出す。
 3Dプリンターは、データを基に材料を少しずつ積み重ねていき、3次元の立体を造る装置のことで、データさえ入力すれば複雑な形状のものでも造ることができる。いまや工業製品だけでなく、医療分野への可能性も注目されている。材料も、樹脂だけでなく金属やゴム、さらには砂糖やチョコレートを用いてお菓子をつくることができるものもあるらしい。
 価格も下がってきており、家庭用のものであれば数万円から購入できるし、多様なデジタル工作機械に触れる機会を提供するファブラボといった工房等に行けば、高機能の3Dプリンターを個人でも利用することが可能である。

 IT技術の進化や工業のデジタル化により、ものづくりの現場は大きく姿を変えている。その中でも、3Dプリンターは、ものを造る体験や造ったものに触れるよろこびを私たちに伝えてくれるだろう。
 子供の頃、プラモデルやミニ四駆等を造った記憶を思い出し、3Dプリンターならば不器用な自分も職人になれるかも、と期待が膨らむ。

(山梨総合研究所 研究員 三枝 佑一)