ふるさと納税、その使い道は


毎日新聞No.451 【平成27年12月11日発行】

 平成27年度の税制改正で、ふるさと納税がより有利に、簡単に利用できるようになった。ふるさと納税は、個人が2千円を超える寄附を行ったときに所得税、住民税が還付、控除されるが、1割程度だった還付、控除額が2割程度に拡大された。収入や家族構成に応じて還付・控除額が変わるので、詳しい金額は、総務省ふるさと納税ポータルサイトで調べることができるほか、住んでいる市町村で確認できる。
 さらに、平成27年4月1日から行うふるさと納税について、ふるさと納税先団体が5団体以内の場合であって、確定申告をする必要のない給与所得者等が寄付を行う場合は、各ふるさと納税先団体に特例の適用に関する申請書を提出することで、確定申告をしなくても、寄附金控除を受けられる特例的な仕組み(ふるさと納税ワンストップ特例制度)が創設された。

 ふるさと納税の控除額が拡大されたこと、手続きが簡略化されたことで、ふるさと納税を行う人は増えているのではないかと思う。しかし、こうした状況は、今まで多額のふるさと納税を受けてきた自治体にとってはさらなるチャンスとなるが、寄付額より控除額が上回っていた自治体にとっては、税収がさらに減ってしまう恐れがあるため、ふるさと納税を増やすことが大きな課題となっている。
 その課題に対し、お礼の品を充実させることも大切であるが、ふるさと納税によって、自治体は何に取り組むのか、どのように良くなるのか、明確なビジョンを示すことも重要ではないか。自治体は使い道を提示することができるのだから、寄付をしたいと思える取り組みについても充実させる必要がある。そして、取り組みの成果を示すことも、大切なお礼の品ではないだろうか。

 ところで、皆さんは住んでいる自治体のふるさと納税のメニューは見たことがあるだろうか。ふるさと納税は、特産物や観光資源、自治体の取り組みなど自治体の魅力をPRできる重要な機会であるが、魅力を伝えるものになっているだろうか。寄付を受ける自治体の一員として、目を光らせてみてはいかがだろうか。

(山梨総合研究所 研究員 渡辺 和樹)