集会と交流


毎日新聞No.454 【平成28年1月22日発行】

 書籍を整理していると、「Rendez+Vous ランデブー」という季刊誌が出てきた。この季刊誌は某社が文化事業の一環として取り組んだもので装丁も中々魅力的である。その1号は1999年7月に発刊されており、タイトルは「甲斐犬物語」―芦安村・早川町界隈を見物する―とある。ページを繰ってみると甲斐日本犬の発見、そのルーツ、天然記念物認定への取り組み、東京上野の国立博物館に「樺太犬ジロウ」や「秋田犬ハチ公」と並んで「甲斐犬黒号」が展示されていることなど、地域の歴史や文化を足で集めた記事が満載である。その特集のまとめに“この甲斐犬物語はこの国が置き忘れてきた何かを思い出させてくれたようなきがする・・・”と記されている。

 さて、地域創生が叫ばれ、各地で地域資源の見直しが始まっている。甲府では甲府駅北口が、図書館・藤村記念館・NHK・YBS・甲州夢小路などを核に生まれかわり「ハイカラな町」といわれたころの賑わいを取り戻す試みが始まっている。
 市川三郷町では旧二葉屋の酒蔵を地元のまちづくり活動グループ「マップの会」が中心になって買収し、慶応大学ホルヘ・アルマザン建築デザイン研究室の協力を得て改装、100人ぐらいが集えるホールに生まれ変わらせた。昨年11月15日、県内外から大勢の関係者が集まり杮落としが催された。ラテンアメリカの民族音楽「フォルクローレ」愛好家グループによる「コンドルが飛んでいく」が演奏されるなどにぎやかであった。このホールは、地域に開かれた場としてコンサートや各種講座・落語会、写真展、子供たちの集会場などに活用されていくに違いない。例えば、参拝客でにぎわっている伊勢神宮の五十鈴川に沿ったおはらい町では、「赤福」のおばあちゃんが米寿の祝いを記念して寄贈した右王舎・左王舎・中央舎という3つの建物を拠点に“ちょっと心のおしゃれをして自分流の時間をすごしてみませんか?”……と日本の暮らしを考えるカルチャースクール「五十鈴塾」が開かれている。俳句・和歌・郷土史・美術・着物・造園・作法などなど心地よさを体験できる場である。

 全米芸術勲章や大英帝国勲章などを受章している歴史家ルイス・マンフォードは「都市の発展は集会と交流にある」といっているが、このホールが公共財として地域をどのように変容させていくか楽しみである。

(山梨総合研究所 副理事長 早川 源)