VOL.67 「1,479事業所」
早いもので、甲府の職場に勤務してもうすぐ1年になる。今では見慣れた街並みであるが、こちらに来た当初は、甲府市中心街の飲食店の多さに驚いた。試しに「平成24年経済センサス」にて事業所数を調べてみると、甲府市内の飲食店は「1,479事業所」であった。ちなみに郡内地方の市町村全ての飲食店の合計は「1,125事業所」であった。数字の面でもその多さに驚く結果となった。ところで、「ワカコ酒」という漫画をご存じだろうか。主人公の女性が居酒屋などを1人で訪れ、料理に合う酒を選び、酒に合う料理を選びながら幸せな時間を過ごす。そして、そのウンチクがちりばめられているといった内容である。「ワカコ酒」を読んだ時、私は「酒」自体を楽しんでいるだろうかと、ふと思った。
「酒」自体を楽しむこととは何かと考えると、マリアージュを楽しむということに行きついた。マリアージュとは主にワインと料理の相性の良い組み合わせを表現するときの言葉だが、日本酒、焼酎、ウィスキーなど他の酒についても存在するはずである。しかし、今までマリアージュを意識したことはなかったし、意識する機会がなかった。居酒屋や料理屋では、「酒」や「料理」の説明はあっても、「酒」に何を合わせるか、「料理」に何を合わせるかについての説明があまりないように感じる。店の人に尋ねようにも、1品1品の料理に対してお勧めの酒を聞くのは心苦しい。
そこで、コース料理とセットで、一つ一つの料理に合うお酒を提供するようなサービスはいかがだろうか。一度の食事で様々な料理が楽しめるし、その料理に合う酒を店側から提供すれば、様々なマリアージュを楽しむことができる。ただし、人によってはワインが苦手、焼酎が苦手など様々なので、酒の種類はお客が指定して、あとはお店に任せるというようなサービスがあれば、様々な酒のマリアージュが楽しめる。
美味しい料理と美味しい酒の組み合わせは、私たちに幸せな時間をもたらしてくれる。また、例えば普段日本酒を飲まない人が、そのサービスをきっかけにして魅力を知ることができるかもしれない。山梨県は日本酒、ワインをはじめ、さまざまな酒を有する醸造の国でもある。まずは甲府市内のいくつかのお店でマリアージュのおもてなしを始めたらいかがだろうか。分母は「1,479」もあるのだから。
(研究員 渡辺 和樹)