地域に内在する縁


毎日新聞No.456 【平成28年2月19日発行】

 2月12日、山梨県庁において甲府市北部で地域活性化に取り組む「帯那地域活性化推進協議会」と「ファミリーマート」による合同記者会見があった。同協議会は、ファミリーマートとの交流の中で地域の休耕田を復活させて酒米を栽培し、県内醸造メーカーに依頼し日本酒を製造している。
 今回の発表は、この日本酒を甲府市内のファミリーマート40店舗で販売するというもので、農村と企業の交流が経済活動にまで発展したことを示している。
 長らく担い手不足と高齢化により活力を失いかけてきた農村であるが、異業種との連携によって少しずつ活力を取り戻す事例も増えてきている。連携にあたっては、なんらかの縁を持つ企業と連携する例が多い。

 この農村と企業が連携する手法は、世界的に見れば韓国において最初に導入されたとされる。2004年から「農村愛一社一村運動」として始まった活動は、今では韓国全域に広がっている。日本国内においては、2005年に静岡県で開始された「一社一村しずおか運動」から、農村と企業との本格的な連携活動が始まった。
 山梨県でも、特定非営利活動(NPO)法人「えがおつなげて」(曽根原久司代表)が先駆的にこの手法を導入し、三菱地所をはじめとした多くの企業とともに地域資源を活用した地域活性化を図っている。山梨県行政でも、2009年より農村と企業の連携活動を仲介支援しており、現在までに県内外の数十社が県内各地の農村でさまざまに活動している。
 この連携活動には、いくつかのステージがある。最初は農作業体験などから始まり、その後企業独自の手法により農村資源の活用を支援するに至る例もある。甲州市の農業法人「奥野田葡萄酒醸造」と「富士通」による活動でも、農作業体験からスタートし、ICT(情報通信技術)でブドウの減農薬栽培の支援を行うまでになっている。農村の異業種との連携活動は、なんらかの縁により始まり、工夫次第で大きく発展し、農村地域の活性化につながる可能性を持っているのである。

 多くの農村は「うちの地域には何もない」というが、ヒトやモノを含め実際には多くの資源を有している。その資源は、地域に内在する外部との縁を絡めることで、大いに活かされる可能性を持っている。

(山梨総合研究所 主任研究員 千野 正章)