若者へのエール
毎日新聞No.457 【平成28年3月4日発行】
春である。陽は日増しに長くなり、眩しさを増し、空気は緩む。方々からは花の便りが届き、人々の服装は軽やかになっていく。やはり「春」はウキウキする。もっとも私の場合はプロ野球のキャンプインを聞くと春である。大分気が早いのだが。
「春」は夢と希望を背負って新しい一歩を踏み出す季節でもある。春の陽は、その一歩を後押ししてくれているようだ。我が家でも次男が4月から東京で一人暮らしを始める。本人の将来に対する夢・希望は早くから芽生え、中学生の頃には高校卒業後の道を思い描いていたので、ようやくそのスタートラインに立ったというところだろうか。
先日、県内の多くの高校で卒業式が行われ、今年は約8,500人(全日制・公市私立合計)の若者が新しいステージへの一歩を踏み出した。この地を離れる若者、この地に残る若者、春の陽はすべての若者に満遍なく降りそそぐ。怯むことなく、怖気づくことなく、正面を向いてまずは自分自身の将来を見据え、精一杯躍動して欲しいと願う。
ところで、毎年のことではあるが、冬に実家の竹林の手入れをしている。竹林に入ると、その成長の早さに驚き、上へとだけ伸びる姿に潔さを感じる。しなやかで、強く、真っ直ぐに伸びる姿は、よく人生の引き合いに出されるが、その秘密は縦一列に並んだ「節」にある。地中から顔を出す時にはすでに数は決まっていて、それを起点に成長するのである。
私たちにも「節」がある。毎日は自分以外の世界との接触の連続であり、その中で選択と決断を繰り返す。そして、その連続性の中で成長する。毎日の中にある小さな発見、ちょっとした感動がきっかけとなり、人生の「節」となることがある。
入学・卒業・就職・結婚といった、生まれた時からおおよそ決まっている「節」と日々の生活の中で自分自身が気付いて手にする「節」。人間には二つの「節」があり、その二つが成長の起点となる。新しい一歩を踏み出す若者たち、「成長の節」を大切に、そして見逃すことなかれ。
未来が君たちを待っている。
(山梨総合研究所 主任研究員 末木 淳)