VOL.71 「12兆円」


 2016年3月4日付け日本経済新聞の「新産業創世記」には、『VR・AR、12兆円市場へ』との記事が掲載された。VRとは、コンピューターグラフィクス(CG)や映像を目の前にあるかのように浮かび上がらせるバーチャルリアリティー(仮想現実=VR)技術を言い、ARとは、現実の光景に様々なデジタル情報を重ね合わせて表示する拡張現実を指す。
 記事では、アメリカのゴールドマン・サックスによると、VR・AR関連機器の市場規模が2025年に最大1,100億ドル(約12兆4千億円)との予測が紹介されており、コンテンツは当面、ゲームやビデオなどが中心となるが、市場拡大に伴い医療や教育など社会課題の解決に役立つ技術へと進化を遂げるとの用途の広がりへの期待も寄せられていた。
 行政に関係する事例として和歌山県有田市では、知名度アップ、地域PRに向けてARの技術を使った地域PRゲームアプリ「AR-ARIDA」を活用しており、㈱キャドセンター(本社:東京都千代田区)では、GPSとAR機能を使い、現地の実際の風景と各種ハザード情報(最寄の一時避難所、火災危険度、河川氾濫時の浸水の深さなど)を重ね合わせて表示するスマホアプリ【ARハザードスコープ】シリーズを開発している。また、㈱アスカラボ(本社:東京都目黒区)では、「一乗谷朝倉氏遺跡」や「三内丸山遺跡」などにおいて、地域自治体と連携し、AR・VR技術を用いた遺跡復元による観光振興や地域活性化への取り組み事例を進めている。
 ところで、甲府市に目を向けると、中心市街地活性化、開府500年など、VR・AR技術を有効に活用できる取り組みがあるのではないだろうか。例えば、天守閣が目前にせまる映像であったり、江戸時代の城下町の様子が天守台の眼前に広がったり、あるいは信玄公の時代の「甲斐府中」の様子が手に取るように分かったりと。
 ますます拡大することが予測されるVR・AR市場。文字通り現実に仮想と拡張を加える技術である。歴史ロマンへの活用はピッタリだと思う。想像するだけでもわくわくするのは私だけだろうか。

(主任研究員 相川 喜代弘)