本物の地域おこしとは
毎日新聞No.465 【平成28年6月24日発行】
6月12日に北杜市の三分一湧水を発着とするスリーピークス八ヶ岳トレイル大会が開催された。トレイルランニング(Trail running、トレラン)は、未舗装の山野路を走る競技である。近年は競技人口も増加しており、全国で年間200を超える大会が開催されている。本県でも今年トレイルと名の付く大会は17ほど予定されている。このスリーピークスは4回目ながら、競技者約800人、フットパス参加者やボランティアを含めると1,000人近い参加がある。競技への申し込みは高い倍率でなかなか参加することもできず、トレランなどの専門雑誌の人気ランキングでも上位に位置する大会である。
この大会が開催されるようになったきっかけは、トレラン愛好家の主婦が、八ヶ岳でトレランをしたいという想いに仲間、関係者が呼応したことである。何もないところから準備を始め開催までこぎ着けた大会である。運営に関しては素人集団であったが、八ヶ岳周辺で活動していた観光関係者、デザイナー、農業、行政、環境関連、トレランのランナーなどの各分野のプロ集団が専門的な部分で個々の力を集結。強みを生かし、弱みを補完することにより開催している。その結果として、アットホームながら隅々まで気配りが行き届き、ポスター、パンフ、Tシャツなどのデザインを含めてとにかくセンス溢れる格好の良い大会運営がなされている。
おそらく、競技者、ボランティア関係者を含め、大会に参加する全ての人は、「皆が温かい」「走るのは苦しい」「でも気持ち良い」「参加できて幸せ」「また来たい」という感想を抱き、この大会の人気の高さに納得ができるであろう。
地域おこしという言葉は難しい。どうしても全ての取り組みをそれに当てはめようとしてしまう。ただ、地域おこしをしようと取り組みを進め、大成した事例はあるのか。地域を愛し、誇りを持ち、「これをやりたい!」という想いを進め、結果として大きな流れを生み、最終的に地域の皆が楽しく、嬉しく、そして誇りに想う何かができあがる。
地域おこしは、取り組みの後からついてくる。そんな思いを強くした大会であった。
(山梨総合研究所 主任研究員 古屋 亮)