国土強靭化とまちづくり
毎日新聞No.466 【平成28年7月8日発行】
今年、熊本県内では4月14日にマグニチュード(M)6.5、16日にはM7.3の2度にわたる大地震があり、その後余震が継続。シンボルの熊本城をはじめ、市役所、住宅の倒壊、土砂災害など甚大な被害が発生した。
こうした大地震、火山噴火などの大規模自然災害、土砂災害に備えるためには、「とにかく人命を守り、経済社会への被害が致命的にならず、迅速に回復する強さとしなやかさを備えた国土、社会経済システムづくりに継続的に取り組むこと」が重要である。こうした趣旨で「国土強靭化基本計画」は2014年6月に閣議決定され、「国土強靭化アクションプラン2014」が公表された。「国土強靭化基本計画」は国土利用計画や防災基本計画、環境基本計画などその他の計画に反映させるべき指針という位置づけで、強靭化計画では施策の重点化や優先順位付けについて不断の見直しを行い、取組みをステップアップすることが求められている。
今年5月24日に決定された「国土強靭化アクションプラン2016」では、「熊本地震の復旧・復興に万全を期していくとともに、今回の地震を踏まえ、更なる事前防災や減災対策に重点的に取り組む。また、昨年の関東・東北豪雨などの状況を踏まえ、水害対策を強化するなど、国と地方、官と民が連携し、国を挙げて、強靭な国づくりを進める」と迅速な対応をうたっている。
急流河川を抱える山梨県は、大雨によって土石流、土砂崩れなどが頻発する地域であり、他方、人口減少で自然災害に対する防災・避難活動が困難な自治体も増えつつある。また、富士山噴火や東海・南海・東南海地震などの巨大地震のリスクが予期されている。あらゆる災害を想定し、その最悪の事態をもたらさないために事前に取り組むべき施策を考えておくことが重要になる。
現在、県内で国土強靭化地域計画を策定した地方公共団体は山梨県のみであるが、4市町が策定に向けた取り組みを公表している。国土強靭化地域計画の策定を機に、住民と行政、交通、エネルギー、医療その他の関係者が連携し、防災とともに産業、医療、エネルギー、交通などの総合的対策を考えていくことが、安心・安全なまちづくりの第一歩であると思われる。
(山梨総合研究所 調査研究部長 中田 裕久)