Vol.217-2 不登校の現状と背景


公益財団法人 山梨総合研究所
研究員 高橋 謙洋

1.はじめに

 文部科学省が毎年行っている「学校基本調査」及び「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によると、平成26年度の長期欠席者(30日以上の欠席者)のうち、「不登校」を理由とする全国の児童生徒数は、小学校で25,864人、中学校で97,033人であった。前年の平成25年度と比較すると、小学生は1,689人増加、中学生は1,591人増加している。「不登校」とは、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあること(ただし、病気や経済的理由によるものを除く。)をいう。対して、小学校の全児童数は平成26年度が6,600,006人、平成25年度が6,676,920人で76,914人減少、中学校の全生徒数は平成26年度が3,520,730人、平成25年度が3,552,455人で31,725人減少している。少子化により児童生徒数が減少している中、平成25年度、平成26年度は不登校児童生徒数が増加している。
 本稿では、不登校児童生徒の現状と、その背景について報告する。

不登校児童生徒数の推移

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出典:文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(平成26年度)


2.不登校児童生徒の数と、不登校となったきっかけと考えられる状況

  平成26年度、小学校では256人に1人の割合、中学校では36人に1人の割合で不登校児童生徒がいる。 

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出典:文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(平成26年度)

  不登校児童生徒の在籍学校数をみると、小学校の学校総数は20,852校、不登校児童在籍学校数は9,976校であり、全体の47.8%、中学校の学校総数は10,608校、不登校生徒在籍学校数は9,068校であり、全体の85.5%を占めている。 

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出典:文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(平成26年度)

  不登校問題に関する調査研究協力者会議の平成15年報告によれば、不登校に対応する上で持つべき基本的な姿勢として、下記の2つの観点から提言がなされている。 

  1. 不登校については、特定の子どもに特有の問題があることによって起こることではなく、どの子どもにも起こりうることとしてとらえ、関係者は、当事者への理解を深める必要があること。同時に、不登校という状況が継続すること自体は、本人の進路や社会的自立のために望ましいことではなく、その対策を検討する重要性について認識を持つ必要がある。
  2. 不登校については、その要因・背景が多様であることから、教育上の課題としてのみとらえて対応することが困難な場合があるが、一方で、児童生徒に対して教育が果たすことができる、あるいは果たすべき役割が大きいことに着目し、学校や教育委員会関係者等が一層充実した指導や家庭への働きかけ等を行うことにより、不登校に対する取組の改善を図る必要がある。

 「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」において、文部科学省では、不登校になったきっかけと考えられる状況として、次のように分類している。

① 学校に係る状況

  • いじめ(児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの)
  • いじめを除く友人関係をめぐる問題(仲違い等)
  • 教職員との関係をめぐる問題(教職員の強い叱責、注意等)
  • 学業の不振(成績の不振、授業が分からない、試験が嫌い等)
  • 進路にかかる不安(将来の進路希望が定まらない等)
  • クラブ活動、部活動等への不適応
  • 学校のきまり等をめぐる問題
  • 入学、転編入学、進級時の不適応

② 家庭に係る状況

  • 家庭の生活環境の急激な変化(親の単身赴任等)
  • 親子関係をめぐる問題(親の叱責、親の言葉・態度への反発等)
  • 家庭内の不和(両親の不和、祖父母と父母の不和等本人に関わらないもの)

③    本人に係る状況

  • 病気による欠席(医師による診断の有無等に関わらない、心身の病気)
  • あそび・非行(遊ぶためや、非行グループに入ったりして登校しない)
  • 無気力(無気力でなんとなく登校しない、登校しないことへの罪悪感が少なく、迎えに行ったり強く催促すると登校するが長続きしない)
  • 不安など情緒的混乱(登校の意志はあるが身体の不調を訴え登校できない、漠然とした不安を訴え登校しないなど、不安を中心とした情緒的な混乱によって登校しない(できない))
  • 意図的な拒否(本人が学校に行く意義を認めない、自分の好きなことに集中したい等)
  • 上記「病気による欠席」から「意図的な拒否」までのいずれにも該当しない、本人に関わる問題

④ その他

⑤ 不明


  
「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」において、平成26年度の小・中学校の不登校になったきっかけと考えられる状況については、下記のとおりである。

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  一般的に不登校になったきっかけとして考えられがちな「いじめ」については、小学校ではわずか1.2%、中学校でも同様にわずか1.1%である。不登校のきっかけとしては、「不安など情緒的混乱」が小学校で36.1%、中学校で28.1%と最も多く、次いで「無気力」が小学校で23.0%、中学校で26.7%と多くなっている。また、小学校では「親子関係をめぐる問題」が19.1%、中学校では「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が15.4%と多くなっている。さらに、「学業の不振」についても小学校で7.1%、中学校で9.3%となっており、不登校のきっかけの一つとなっている。


3.不登校児童生徒が相談・指導等を受けている状況

(1)不登校児童生徒が相談・指導等を受けた機関

 平成26年度、不登校児童生徒が相談・指導等を受けた学校内外の機関等は、下記のとおりである。

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 小中学校の不登校児童生徒のうち、学校外の機関等で相談・指導等を受けた人数は38,056人(31.0%)、学校内で相談・指導等を受けた人数は59,912人(48.7%)であった。学校外の機関等で相談・指導等を受けた38,056人のうち、14,919人が「教育支援センター(適応指導教室)」で相談・指導等を受けている。一方、34,645人(28.2%)が学校内外どちらでも相談・指導等を受けていない。

(2)教育支援センター(適応指導教室)の設置状況

 平成26年度、都道府県又は市町村の教育委員会が設置する「教育支援センター(適応指導教室)」の数は1,324か所(前年度比38か所増)である。このうち都道府県教育委員会が設置したものは28か所(前年度比8か所減)、市町村教育委員会が設置したものは1,296か所(前年度比46か所増)となっている。 

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出典:文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(平成26年度)

 教育支援センター(適応指導教室)とは、不登校児童生徒等に対する指導を行うために教育委員会及び首長部局が、教育センター等学校以外の場所や学校の余裕教室等において、学校生活への復帰を支援するため、児童生徒の在籍校と連携を取りつつ、個別カウンセリング、集団での指導、教科指導等を組織的、計画的に行う組織として設置したものをいう。なお、教育相談室のように単に相談を行うだけの施設は含まない。
 平成27年度の文部科学省「教育支援センター(適応指導教室)に関する実態調査」によると、約6割(1,086)の自治体で教育支援センターを設置している一方、約4割(730)の自治体で設置していない。

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 出典:文部科学省「教育支援センター(適応指導教室)に関する実態調査」(平成27年度) 

 教育支援センターを設置していない理由(複数回答)は、「通所を希望する不登校の児童生徒が少ないと見込まれるため」が456件で全体の62.5%、「教育支援センターを運営する予算、場所の確保が困難なため」が370件で全体の50.7%と、この2つの理由が上位を占めた。 

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 (3)不登校児童生徒数と教育支援センター設置数、学力調査結果との関連性

 平成26年度の都道府県別の不登校児童生徒数と教育支援センターの設置状況をみてみると、山梨県の不登校児童生徒数は835人、1,000人当たりの不登校児童生徒数は12.2人、教育支援センターの設置数は15となっている。
 下記の表は、都道府県別の小中学校の児童生徒1,000人当たりの不登校児童生徒数を少ない順に並び替え、教育支援センター設置数及び教育センター当たりの不登校児童生徒数を比較したものである。


出典:文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(平成26年度)を基に作成

 1,000人当たりの不登校児童生徒数と教育支援センター当たりの不登校児童生徒数は完全に比例ではないものの、岩手県、秋田県、山形県、福井県、宮崎県はどちらも上位に属し、宮城県、神奈川県、愛知県、大阪府、沖縄県はどちらも下位に属していることから、高知県などの例外もあるが、一定の相関が予想される。
 さらに、平成26年度の都道府県別の中学校の不登校生徒数と公立中学校の平成26年度全国学力・学習状況調査の結果を比較してみると、下記のようになる。

217-2-7出典:文部科学省「全国学力・学習状況調査」(平成26年度)及び「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(平成26年度)を基に作成

 こちらも、不登校生徒数と学力調査の平均正答率は完全に比例するものではないものの、秋田県、富山県、福井県はともに上位に属し、大阪府、和歌山県、高知県、沖縄県はともに下位に属している。このことから、先述の「学業の不振」が不登校のきっかけとなったように、学力と不登校についても関連があるのではないかと考える。
 教育支援センター当たりの不登校児童生徒数を比較すると、最も少ない福井県(27.73人)と最も多い宮城県(269.10人)では9.7倍もの差がある。児童生徒28人への対応と269人への対応とでは、児童生徒に寄り添ったきめ細かい相談指導を行うという点で差が生じるのではないだろうか。教育支援センター設置数のみを数え、それぞれの教員数や学級数を考慮していないため、教育支援センター当たりの受入可能人数に差があることは想定されるが、児童生徒が通所する際の距離を考えると設置数が多いことが望まれる。
 秋田県と福井県は、ともに少人数学級による授業を実施し、学力の向上を図っている。授業の理解を深めることが、不登校のきっかけを抑止しているのではなかろうか。

(4)不登校児童生徒への指導結果状況

 最後に、不登校児童生徒への指導結果状況は、下記のとおりである。

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出典:文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(平成26年度)を基に作成

 不登校児童生徒122,897人のうち、指導の結果、登校できるようになった児童生徒は38,738人(31.5%)である。また、継続した登校には至らないものの好ましい変化がみられるようになった児童生徒が25,468人(20.7%)であった。ただし、38,738人が登校できるようになった一方で、84,159人(68.5%)の児童生徒が登校できていない。


4.おわりに

 不登校とは、不安や家庭環境、友人関係などの多様な要因・背景により、結果として不登校状態になっているということであり、その行為を「問題行動」と判断してはいけない。不登校の児童生徒が悪いという根強い偏見を払拭し、「行きたくても行けない」現状に苦しむ児童生徒とその家族に対して、「なぜ行けなくなったのか」といった原因や「どうしたら行けるか」といった方法のみを論ずるだけではなく、学校・家庭・社会が不登校児童生徒に寄り添い、共感的理解と受容の姿勢を持つことが、児童生徒の自己肯定感を高めるためにも重要である。不登校児童生徒にとっても、支援してくれる周りの大人との信頼関係を構築していく過程が、社会性や人間性の発展につながり、結果として、社会的自立につながることが期待される。
 不登校という状況が継続し、十分な支援が受けられない状態が続くことは、自己肯定感の低下を招くなど、本人の進路や社会的自立のためにも望ましいことではないことから、支援を行う重要性についても十分に認識する必要がある。豊かな人間性や社会性、生涯を通じた学びの基礎となる学力を身に付けるなど、全ての児童生徒が、それぞれの自己実現を図るための支援が望まれる。不登校となってしまう児童生徒が減り、またたとえ不登校となってしまったとしても再登校できるよう、学校、教育委員会及び教育支援センターの果たす役割は大きい。
 学校の夏休み明け前後には子どもの自殺が急増する傾向があるとして、文部科学省が教育委員会や学校に注意喚起を求めている。不登校児童生徒の中には、リストカットに代表されるような自傷行為に及ぶ子どもがいる。このことに関しては、改めて研究・考察が必要となるものであるが、自己肯定感の低下から自傷行為を繰り返す児童生徒が増えることなど、あってはならない。