個性の尊重とは


毎日新聞No.470 【平成28年9月2日発行】

 国民的人気アイドルグループSMAPが、今年1231日をもって解散することになり、波紋が広がっている。
 彼らが支持される要因として、まず頭に浮かぶのは、メンバー5人の「個性」が確立・尊重されている、ということである。歌だけにとどまらず、バラエティー、司会、ドラマ、映画など多方面での活躍は、各メンバーの持ち味が遺憾なく発揮されているからに他ならない。
 広辞苑によれば、「個性」とは、「個人に(そな)わり、他の人とはちがう、その個人にしかない性格・性質」のことを指す。ところで、「個性」が無視されることは、その人にとってどういう意味を持つのか。
 例えば、本人の意思で選択できない固有の性質を否定されると、人は苦痛を感じるはずである。それはまるで、「変えることができないことを変えなさい」と要求されているようなものだから。

 今年2月、自民党は、当時の稲田朋美政務調査会長の指示により、「性的指向・性自認に関する特命委員会」を党内に設置。性的マイノリティーなどの性的指向・性自認に悩む当事者(以下「当事者」という)の現状の調査や対策の検討を行った。
 同委員会によると、「当事者は、学識経験者の調査結果等を踏まえると、人口の3~5%程度存在するとされ、身の回りのおおむね2030人に1人程度は、当事者が普通に生活していると考えるべきだ」とのこと。
 さらに、「性的指向(恋愛や性愛の対象となる性別)や性同一性(自己に属する性別についての感覚。性自認とも言う)は、ともに本人の意思で選んだり変えたりすることはできないものと考えられ、本人の意思や趣味の問題であると片付けてしまうことは誤り」としている。
 このことから、性的指向や性同一性は、当事者の「個性」の一つと言える。その個性が尊重されること、すなわち、「あなたはあなたのままで良い」と、当事者の個性がそのまま受容される環境を整えるという視点が、彼らの苦悩を緩和する上で重要ではないか。

 李(おうばいとうり)」。これは、桜は桜、梅は梅、桃は桃、李は李と、そのままの姿で個性を生かしきっていくという意味で、日蓮上人などが残した言葉とされる。個性が尊重され、その人らしく生きることができる、そのような社会の構築が実現されることを切に願う。

(山梨総合研究所 主任研究員 安部 洋)