機械が人類を超える日
毎日新聞No.473 【平成28年10月14日発行】
9月21日、文化庁が2015年度「国語に関する世論調査」の結果を発表した。この調査で、漢字を用いた言い方と、同じような意味で使われるカタカナを用いた言い方を対比して挙げ、どちらの言葉を主に使うかを尋ねたところ、「雪辱」と「リベンジ」では、「雪辱」が21.4%であるのに対し「リベンジ」が61.4%であった。同様に、「運動選手」33.3%に対し「アスリート」46.0%、「競技場」37.0%に対し「スタジアム」36.3%となっている。この結果が示すように、カタカナを用いた言葉の使用頻度が高くなってきている。
「リベンジ」や「アスリート」ほど認知度は高くないが、「シンギュラリティ」という単語も、ここ2~3年で一般的になるかもしれない。
シンギュラリティ(Singularity)とは、特異点という意味であり、人工知能研究の権威である米国の発明家レイ・カーツワイル博士は、コンピュータ技術が今のスピードで発達し続けると、2045年ごろにコンピュータの人工知能が人間の知能を超えると予測し、その時点をシンギュラリティと呼んでいる。
SF映画のような話であるが、このことに対し、総務省では「コンピュータが加速度的に発達することによって、その能力が人間の能力を上回る、いわゆるシンギュラリティに達すると言われている。その状況を迎えるにあたり、人間と機械・コンピュータの関係と共存について根本的な議論が必要になってきている」として「インテリジェント化が加速するICTの未来像に関する研究会」を開催し、シンギュラリティが本当に起こりえるかということを議論している。
チェス、将棋、そして囲碁でも人工知能がプロ・名人に勝利したことは記憶に新しい。東京大学の松尾豊准教授によると、2015年2月の時点で、画像認識において人工知能が人間を超えたという。人間が画像を認識する際のエラー率は5.1%だが、同年2月に米マイクロソフト社の人工知能のエラー率は4.9%、同年3月に米IT大手のグーグルの人工知能のエラー率は4.8%に到達している。既に、パソコンやスマートフォンでグーグルフォトを使用し、「犬」と検索すれば犬の写真が、「猫」と検索すれば猫の写真が表示される。
オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授は「今後10~20年で約47%の仕事が機械化される」と発表。消えてなくなる職業・仕事を示し衝撃を与えたが、ここに少子高齢化社会の解決の糸口があるように思う。
鉄腕アトムやドラえもんのようなロボットが現れるのか、映画「ターミネーター」や「マトリックス」のような機械が人間を支配する世界が待っているのか。人々の働き方や生活が一変する未来が、すぐそこに迫っている。
(山梨総合研究所 研究員 高橋 謙洋)