Vol.219-2 クラウドファンディングの現状と今後の方向性について


【山梨総合研究所 研究員 三枝 佑一】

1.はじめに

 クラウドファンディングという言葉を耳にする機会が増えてきた。起業を目指す人や、新商品の開発を目指す人などによる活動資金の獲得を目的とした資金確保の新たな手段として注目を集めている。
 金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」報告書(平成251225日)によると、「クラウドファンディングとは、必ずしも定まった定義があるものではないが、一般には『新規・成長企業等と資金提供者をインターネット経由で結び付け、多数の資金提供者から少額ずつ資金を集める仕組み』を指すもの」と記載されている。クラウドファンディングは必ずしも明確な定義がある訳はないようだが、金融庁においても新規・成長産業へのリスクマネー供給促進を目的として、金融商品取引法を改正するなど環境整備を実施しており、今後もクラウドファンディング市場の規模拡大が見込まれる。
 本稿では、クラウドファンディングの仕組みを解説するとともに、山梨県内のクラウドファンディングの活用事例を紹介し、今後の方向性について考察する。

 2.クラウドファンディングとは

(1)仕組み

 一般に、クラウドファンディングは、Crowd(一般大衆)とFunding(資金調達)を組み合わせた造語で、インターネットを通じて、不特定多数の人から資金調達を行なう仕組みと言われている。

 

図1 クラウドファンディングの仕組み

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出典:FAAVO資料より作成

 

 例えば、○○をやりたい!と考えた人(起案者)が資金を調達しようと考えた場合、クラウドファンディング サイトに自分のアイデアを投稿する(①)。なお、この起案者は個人に限らない。グループやサークル、法人等でも可能である。クラウドファンディングサイトには、様々なプロジェクトが掲載されており、多くの人の注目を集めている(②)。例えば、あなたのプロジェクトに目をとめ、これはいい!と共感し、このプロジェクトを支援したいとなった場合、例えば5千円、1万円など資金を提供する(③)。これらは、銀行振込のほか、クレジットカード決済が可能である。また、知り合いや友人にもぜひ教えたいとSNSであなたのプロジェクトを拡散し、彼らが新たな支援者になってくれるかもしれない。この集まった資金から手数料を除いた金額が、クラウドファンディングサイトから起案者に支払われる(④)。

図2 クラウドファンディングサイト(例)

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 このような仕組みは、実は古くから存在していて、例えば弁慶と源義経で有名な歌舞伎の「勧進帳」、これも寺院の建設や修繕のために、信者や有力者から費用を奉納してもらう仕組みであった。もっと身近な例で言うと、地域の公民館もそうであろう。地元の住民からの寄付により建設され、奉納金○萬円誰々と記載されているのを見たことがあるのではないだろうか。
 これらも、一般の人々から資金を集める仕組みであるが、クラウドファンディングはインターネットを介することにより、より大きな金額を、たくさんの人から集めることが可能となった。先行する海外では、10億円を超える資金を集めたプロジェクトが既にいくつも誕生している。世界のクラウドファンディング市場の調査を行うMassolution社によると、2014年度の世界のクラウドファンディングによる総調達額は162億ドルに達しており、2015年度には344億ドルに達する見込みである。日本でも、本年6月に6,000万円を超える資金を集めたプロジェクトなど、多くの金額を集めるプロジェクトが誕生しているが、商品開発のような大型プロジェクトだけでなく、イベントの開催から社会貢献に関するものまで、実に多くの種類のプロジェクトが生まれている。
 このように、インターネットを介して起案者と支援者をつなぐ仲介業者はプラットフォームと呼ばれ重要な役割を果たしている。現在、日本でも約100社がクラウドファンディングのサイト運営に参入しているが、代表的なプラットフォームとしては、READYFOR?(レディフォー)、Makuake(マクアケ)、CAMPFIRE(キャンプファイヤー)、FAAVO(ファーボ)などがある。

 

図3 さまざまなプラットフォーム
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(2)種類

 クラウドファンディングは、支援者からの資金提供に対するリターンに応じて、図4のように寄付型、購入型、貸付(融資)型、投資型に分類されることが多い。

図4 クラウドファンディングのタイプ

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219-2-8出典:「ふるさと投資」の手引き(内閣府地方創生推進室)

①寄付型

  • ウェブ上で寄付を募集するものであり、支援者に対する金銭的なリターンは想定されない。
  • 主なプラットフォームとして、ジャパンギビング、GiveOne(キブワン)がある。
  • 主な資金調達者は、NPO法人等の非営利団体で、寄付金控除等の税制優遇措置の対象となることが多い。

②購入型

  • ウェブ上でモノづくりなどのプロジェクトに対して資金調達が行なわれ、その成果としてモノやサービスなど対価が支援者に対して提供される。
  • 主なプラットフォームとしては、READYFOR?(レディフォー)、Makuake(マクアケ)、CAMPFIRE(キャンプファイヤー)、FAAVO(ファーボ)など。
  • 資金調達者は、個人やNPO法人、企業などさまざま主体が想定される。
  • 対価についても、モノやサービスのほか、イベントへの招待・参加権など極めて多様である。
    なお、各プロジェクトには目標金額と募集期間が設定され、期間内に目標金額が集まった場合のみプロジェクトが成立するオールオアナッシング方式が採用されている。目標金額に満たなかった場合、起案者には資金提供は行われず、資金提供者に返還されることになる。 

③貸付(融資)型

  • 投資家(お客様)が、インターネットを介して資金を必要とする事業者へ資金を貸付け、利子を受け取るという仕組みである。ソーシャルレンディングとも言われる。
  • 主なプラットフォームとしては、maneo(マネオ)がある。
  • 投資家は、融資先のリスクに応じて年5%前後の利回りを得ることが出来るが、元本保証はなく、融資が焦げ付いて損失をこうむるリスクがある。
    なお、投資家は個別の融資先について知ることはできないところが、他の分類との大きな違いである。

④投資型

  • 投資型は、ファンド形態と株式形態に分けられる。
  • ファンド形態の主なプラットフォームは、ミュージックセキュリティーズである。同社の設立は2000年と早く、当初は音楽ファンドを運営していた。現在は、日本酒ファンドをはじめ、食品、工芸品など多様なファンドを運営している。また、単なる金銭のリターンだけでなく、日本酒等の現物やイベント参加などの特典がつき、購入型の要素も含まれている。
  • 株式形態は改正金融商品取引法の施行により、2015年5月に解禁された。株式会社日本クラウドキャピタルが、20161013日に、国内初の株式投資型クラウドファンディングサービスの運営に必要な登録が完了したことで、今後サービスが開始される。
    なお、1人当たりの投資額は1社50万円までと制限されている。

 

(3)クラウドファンディング活用の意義とメリット

 クラウドファンディング活用の意義とメリットについて、「ふるさと投資」連絡会議(事務局:内閣府地方創生推進室)が作成した、「ふるさと投資」の手引きでは、次のように整理している。

①個人・中小事業者・ベンチャー企業にとっての新たな資金調達手段、個人にとっての新たな資金運用手段

  • インターネットを介することで、個人(支援者)が直接、個人や中小事業者、ベンチャー企業に資金提供する道が開かれた。
  • インターネット上での手続等、取引コストの低下により、小規模、小口の取引が可能となる。
  • 支援者が、資金調達者(起案者)のプロフィールや資金を必要とする理由などが把握しやすい、いわば「顔が見えやすい」仕組みであることから、個人が個々の事業者の思いに応えて資金提供するという側面が強い。 

②個人・中小事業者・ベンチャー企業にとっての新たなマーケティングの手段、新たなファンづくり

  • クラウドファンディングによる資金の集まり具合によって製品、サービス等がどの程度社会から求められているのか、プロジェクトの募集行為自体がマーケティングやPRの手段となる。
  • 支援者がファンとなって、継続的に商品を購入したり、知人に紹介したり、販路が拡大する。
  • なお、あるプラットフォームでは、フェイスブックの「いいね!」の数が多いほどトップページへの掲載順番が早くなっており、SNSでの情報発信、情報拡散が重要となっている。

③個人・中小事業者にとっての起業の契機・学習の場の提供

  • 支援者に製品、サービス等を提供するという責任を全うする中で、起業をする決意をしたり、起業をするための様々な学習を行なったりすることができる。

④個人の新たな楽しみ、生きがい、コミュニティの発見と個人・中小事業者・ベンチャー企業のモチベーション向上

  • 支援者にとって、新たな資金提供先を見つけ、製品やサービスなどのリターンを得ることは、新たな楽しみとなる。また、「誰かを応援したい」という気持ちを満足させられることは、新たな生きがいを提供していると言える。

図5 投資の動機

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出典:「ふるさと投資」の手引き(内閣府地方創生推進室)

  • 図5 投資の動機でも、「仕組みに共感」、「事業を応援」が上位を占めており、利益の追求よりも、事業支援が重視されている。また、事業へ共感してもらうことで、SNSを通じた情報の拡散が始まり、多くの人に知ってもらうことでより多くの資金獲得につながっていく。

図6 情報の拡散 219-2-6

  • 資金提要を受けた個人、中小事業者、ベンチャー企業の側(起案者)も、支援者からの感想やアドバイス等を受けることで、モチベーション向上につながる。

⑤地域の活性化、被災地支援

  • 地域の取り組みに、同じ地域の住民が共感して資金を提供する「地産地消型」の取り組みは、住民の参加機会の拡大を通じて、地域住民の自立性を醸成する利点がある。
  • 東日本大震災発生後、中小事業者の復旧のための設備導入や運転資金としてクラウドファンディングが活用され、製品やサービスを購入することで地域の活性化に貢献するとともに、投資家からの応援の声が復興に向けて立ち向かう勇気を与えてくれたという話もある。

 

3.山梨県内でのクラウドファンディングの活用

山梨県内においても、既にいくつかのプロジェクトが立ち上げられているが、新たな動きとして本年1月にFAAVOやまなしが開設された。

(1)FAAVOやまなし

 FAAVOは、「地域の『らしさ』を誰もが楽しめる社会をつくる」をコンセプトとし、地域を盛り上げるプロジェクトに特化したクラウドファンディングネットワークである。また、エリアオーナー制を採用し、地域に根ざした団体と連携することで、地域を盛り上げるプロジェクトの発掘に取り組んでいる。現在59エリアで展開中。
 FAAVOやまなしは、2016年1月に、50番目のエリアオーナーとして開設。2016年9月末現在、8件のプロジェクトが成立している。金額こそ大きくないものの累計支援者数は300人を超え、「コミュニティ・場所づくり」「お祭り・ローカルイベント」といった情報発信やPR、ファンづくりを主眼としたプロジェクトも見受けられる。

図7 FAAVOやまなしの既存プロジェクト状況219-2-7出典:FAAVOやまなしHPより作成

①富士山と縁の深い御師の家を、複合型ゲストハウスにして守っていきたい!

  • 達成金額 885千円(目標額 600千円)  ・支援者 72
  • カテゴリー:コミュニティ・場所づくり
  • 内容:富士山と深い関わりを持つ御師の家や文化を残し、伝えたいと、御師18代目の起案者が立ち上げた。年々減りつつある御師の家を複合型ゲストハウスにし、必要な備品や寝具、カフェ内装費等を募るプロジェクトを起案。
  • 最多支援者のリターン 1万円(26人)

お礼のメッセージ(富士山関連のポストカード)
fugaku & hitsukiのオリジナルショップカード
公式HPに名前を記載
御師の版木を刷ったお守り
ゲストハウスドミトリー宿泊券1枚またはカフェドリンク半額パス(2ヶ月有効)

②山梨県で世界一安全なキャットフードを作って、全国の猫へ安心を届けたい!

  • 達成金額 712千円(目標額 600千円)  ・支援者 46
  • カテゴリー:ものづくり・デザイン
  • 内容:過去には、殺処分された犬猫が不法に流通し、フードの原料として使われていた事が問題となったことがある。山梨県の山で猟師によって害獣として捕獲された鹿肉を主原料として、安全・安心なキャットフードを作りたいとプロジェクトを起案。
  • 最多支援者のリターン 1万円(19人)

お礼の手紙
バームクーヘン、卵
卵かけご飯専用茶碗(ペアセット)
卵かけご飯専用醤油
猫ステッカー
CATaLOGUEオリジナル消臭スプレー
世界一安全なキャットフードサンプル

③「1日登山」を続けている児童養護施設を応援!めだかの学校プロジェクト!

  • 達成金額 566千円(目標額 200千円)  ・支援者 77
  • カテゴリー:コミュニティ・場所づくり
  • 内容:1日登山を続けている児童養護施設を応援する「めだかの学校プロジェクト」を起案。
  • 最多支援者のリターン 2,500円(40人)

お礼状
オリジナルトートバッグ

④山梨で起業を考え、学び、集うイノベーティブコワーキングスペース

  • 達成金額 372千円(目標額 300千円)  ・支援者 41
  • カテゴリー:コミュニティ・場所づくり
  • 内容:自分が住んでいる山梨で起業したい人、起業に関心のある人を支援し、全国、世界に通用する事業を応援したいと思い、現在空いている事務所の2階をコワーキングスペースとして開放し、起業と事業発展を支援するためのプロジェクトを起案。
  • 最多支援者のリターン 2,000円(21人)

お礼状
名前をスペース内とホームページに掲示
ステッカー
実施レポート

甲府中心街を葦ランプで彩り、小江戸情緒を演出したい!

  • 達成金額 241千円(目標額 200千円)  ・支援者 44人
  • カテゴリー:お祭り・ローカルイベント
  • 内容:甲府中心街で、まちなか小江戸祭りを開催するさいに、演出として商店街の通りを葦ランプで飾りつけて情緒ある幻想的な雰囲気を演出したいとプロジェクトを起案。
  • 最多支援者のリターン 1万円(15人)

お礼メール
葦ランプ
山梨県産ぶどう2kg相当

⑥若者と社会をつなぐプロジェクト〜18歳選挙権時代を迎えて〜

  • 達成金額 122千円(目標額 100千円)  ・支援者 13人
  • カテゴリー:コミュニティ・場所づくり
  • 内容:大学生主体の勉強会を企画。その際の施設利用料や図書購入費を募集するためのプロジェクトを起案。
  • 最多支援者のリターン 1万円(4人)

感謝状
活動報告書
イベント参加(招待)

⑦「甲州寄席」で地域を盛り上げよう!おもてなし芸人「かがみもち」と一緒に!

  • 達成金額 58千円(目標額 50千円)  ・支援者 18
  • カテゴリー:お祭り・ローカルイベント
  • 内容:甲州おもてなし芸人であるかがみもちさんが、地元で開催する甲州寄席の会場使用料、チラシ代等の運営費を募集するためプロジェクトを起案。
  • 最多支援者のリターン 2,000円(9人)

かがみもちオリジナル やまなし手ぬぐい
かがみもち 千社札

 (2)その他

 FAAVOやまなし以外にも県内でのクラウドファンディング事例がすでにいくつか公表されているが、ここでは現在募集中のものを含め3例紹介する。

①少し新しい「イナカ」づくり 築100年の古民家を双子姉妹が宿にリノベーション!!

  • 達成金額 945千円(目標額864千円)  ・支援者 100
  • カテゴリー:地域活性化
  • 内容:伝統的な古民家に、新しい視点を入れることで、よりイナカが魅力的な空間になる。もっと身近な存在になることでより多くの人が訪れ、持続可能な魅力的な集落になるのではないかと考え、地元芦川にある築100年の古民家をリノベーションして一棟丸貸しの古民家宿にするプロジェクトを起案。
  • 最多支援者のリターン 3240円(24人)

お礼のメッセージ
WebページSPサンクス記載
宿の内部にお名前刻印
地元芦川の手作りさしみコンニャク5

②モノづくりが変わる。5万円台のレーザー加工機

  • 達成金額 60,115千円(目標額1,000千円)  ・支援者 1,036
  • カテゴリー:ものづくり
  • 内容:個人でも手の届く価格を実現したレーザー加工機を開発したいと、プロジェクトを起案。開始26分で目標金額100万円を達成。支援総額6,000万円超は達成当時(20166月)、国内主要プラットフォームにおける史上最高金額だった。
  • 最多支援者のリターン 49,800円(305人)

本体組立セット
専用ソフトウェア
保護メガネなど

③ほったらかし温泉の新温泉づくりファンド

  • 達成金額 募集中(目標額 52,500千円)  ・支援者 募集中
  • カテゴリー:観光・宿泊
  • 内容:ほったかし温泉は山梨県内でも屈指の観光スポットとして、週末を中心に多くの観光客を集めている。そんなほったかし温泉の隣接地に新たな温泉施設を造るにあたり、クラウドファンディングを通じて事業資金の一部を現在募集している。
  • 特典:売上に応じた分配金のほか、ほったらかし温泉カード(5年間の入浴料無料)、新温泉オープンの一番風呂の特別入浴権。

4.まとめ

 クラウドファンディングは急激に市場を拡大しているが、必ずしも資金を集めることだけが目的ではなく、プロジェクトを通じた情報の発信により注目を集めること、そしてファンづくりが重要な要素となっている。
 FAAVOやまなしの事例「⑦ 『甲州寄席』で地域を盛り上げよう!おもてなし芸人『かがみもち』と一緒に!」では、支援者数は18人、集まった金額は58千円であるが、このプロジェクトに共感しフェイスブックの「いいね!」ボタンを押した人は583人おり、多くの人がイベントに参加したのだろう。また、「① 富士山と縁の深い御師の家を、複合型ゲストハウスにして守っていきたい!」では、「いいね!」の数は2833、「② 山梨県で世界一安全なキャットフードを作って、全国の猫へ安心を届けたい!」では890と、多くの人が起案者の想いに共感していることがわかる。
 事業に対する必要な資金を確保すると同時に、プロジェクトを広く社会に情報発信しアピールする。また、支援者にとってもプロジェクトの取組みに賛同し応援することで「地域を応援したい」、「社会の役に立ちたい」という思いを実現する。新たな資金調達手段として、また地域課題への関心を高める手法として、クラウドファンディングの利活用が期待される。

  【主な参考資料】
金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ報告書」(平成25年12月25日)
内閣府地方創生推進室「ふるさと投資の手引き」
FAAVOやまなし他、各クラウドファンディングHPサイト