VOL.76 「20時00分」


 東京都は、″ライフ″・ワーク・バランスの実現に向けた取り組みの一環として、超過勤務縮減のための新たな取り組みを始めた。責任ある強力な推進体制の下、徹底した超過勤務縮減に取り組み、「残業ゼロ」に向けた職員の意識改革を図っていくとしており、主な取り組みとして、「残業削減マラソン」と「20時00分完全退庁」を進めている。
 「残業削減マラソン」は、各部局の自律的かつ主体的な取り組みを強化するため超過勤務縮減の計画・目標を設定し、その上で進捗著しい部局をモデル職場として指定を行うと共に、全庁をあげたPDCAサイクルを回すため、「都庁超勤対策チーム」を設置し、定期的に状況確認を行うこととしている。また、「20時00分完全退庁」については、毎日遅くとも20時までの退庁を目指すとし、20時退庁を知らせる放送と、庁内一斉消灯を行い、20時以降の退庁者は庁舎出口でチェックするとしている。
 この取り組みを目にしたとき、なぜ「残業削減マラソン」と「20時00分完全退庁」が同時進行で行われるのかと疑問に感じた。
 「残業削減マラソン」において、各部局で計画と目標を設定する中で、長時間に及ぶ超過勤務の原因が、「職員の超過勤務における終業時間が定められていないから」という結論に達したのであれば、多少強引かつ急激であったとしても「20時00分完全退庁」を各部局において強制的に実施するのは理解できるが、計画・目標の設定中であり、超勤対策チームを設置したという段階であるのにもかかわらず、「20時00分完全退庁」を取り組みとして同時進行させるのはあまりに強引に見えてならない。
 重要なのは、「残業削減マラソン」において職員の仕事量や仕事方法についての改善について計画を設定し、超過勤務縮減に取り組むことであり、「20時00分完全退庁」は、その目標として掲げるべきある。

山梨総合研究所 研究員 渡辺 和樹