幸福度を上げよう


毎日新聞No.476 【平成28年11月25日発行】

 国連が2012年から出している世界幸福度報告書(World Happiness Report)の2016年版によると、日本の幸福度ランキングは世界第53位となっている。この報告書によると、デンマークが1位、次いで小差の2位がスイス、以下アイスランド、ノルウェー、フィンランド、カナダ、オランダ、ニュージーランド、オーストラリア、スウェーデンとなっており、10位までに欧州の小国が7カ国ランキングしていることがわかる。
 このランキングの元になる幸福度は、①1人当たりの国内総生産②社会的支援=社会福祉、困難な時に助けてくれる人がいるか③健康寿命④社会的自由=人生の選択肢が幅広い⑤寛容さ⑥汚職のなさ――を数値化して出している。
 日本は、①、③、⑥の数値は高いが、②、④、⑤の項目の数値が低いことによりランキングが下位となっている。

 現在、日本は急激な人口減少社会の入り口にいる。本県でも人口が83万人を割り込む事態となっていて、2040(平成52)年には人口が60万人台になる推計もある。
 人口規模でみると、本県は既に東京都世田谷区よりも人口が少ない。そのため、本県内の各自治体においては、長期の人口ビジョン、総合戦略が策定され、人口増・雇用増を目指し多様な施策が実施されている。しかしながら、確実に人口が減少すると推計される中で、本県は再度の人口増・雇用増の社会を目指すべきなのだろうか。本県は、1人当たりの総生産額が高く、無尽という社会的組織もあり、健康寿命は日本で1、2位を争う高さである。日本のデンマーク、スイス、アイスランドになれる要素を十分に満たしている。

 国連の基準を元に日本国内で本県の幸福度を推測すると、日本国全体と同様に④、⑤の数字が低くなり、この数字を上げることさえ出来れば、本県は住みやすく幸福な県となる。国連の指標とはいえ、イメージとしてデンマーク、スイスの幸福度が高いと言われると納得するのではなかろうか。本県では、社会的自由とある程度の寛容さを発揮できる環境の構築さえ目指せば住民の幸福度は上がり、格段に住みよい地域となるであろう。

(山梨総合研究所 主任研究員 古屋 亮)