Vol.220-1 ふるさと・やまなしの『セーフコミュニティ』を目指して・・・
ボランティア団体 リズムオブラブ代表
やまなし大使 渡辺 光美
1.はじめに
「リズムオブラブ」は“かけがえのない命を大切にできる心と体づくり”を目指し、健康・安全に関わる課題を解決するための「山梨発信!健康安全郷育プログラム」を、地域に出向いてお届けする市民(ボランティア)活動をしています。団体の名称になっている「リズムオブラブ」のリズムとは、私たちが「かけがえのない命」を授かって一番最初に聴く「母親の心臓の鼓動」を意味していて、ラブは真心・思いやり、人間愛・郷土愛などの広義の愛のことを意味しています。
活動の形態は、講座・教室・研修・ステージ・イベント等様々なカタチがありますが、いずれも主催者のニーズや対象者の体力・環境に応じた体感型プログラムを作り上げ、“誰もが、いつでも、どこでも、いつまでも”楽しめる内容となっていて、それらは健康安全につながる運動・体操・遊び等の視聴覚教材や教本の制作および論文発表などを通じて無形のプログラムを目に見えるカタチにしてふるさと山梨に還元しており、活動に使用する運動道具・楽器などは、山梨県産のFSC認証を受けた木材や地場産業を活用した製品を考案し、山梨県民の皆さまに直接手に触れていただき、ふるさと山梨に「誇りや愛着」を持っていただくことも目的としています。
また、現在は「やまなし大使」として県内だけではなく、県外にも出向いて健康安全の啓発活動なども積極的に行っています。
2.ボランティア活動との出会い
大学卒業後、子ども時代からの夢だった小学校と幼稚園の教諭として20年間勤めましたが2008年3月、周囲の反対を押し切って退職し、2009年4月、ボランティア団体「リズムオブラブ」を立ち上げました。
2001年、小学校で子どもたちと真正面から向き合っている時に、大阪府で児童8人が校内で殺傷されるという「大阪教育大学付属池田小事件」が起こりました。その頃から、「子どもの命を真ん中に据えた教育」とは何だろう、「かけがえのない命を自分で守るために必要な系統だった実践的健康安全教育」を教育現場に導入できないかと模索していました。そして、2002年に現在のプログラムの原点となる「健康安全教育プログラム」を考案し、体育や道徳の授業、学級指導、あるいは運動会・発表会等の学校行事の中で児童、同僚、保護者たちと実践していきました。その後、この活動を継続しているうちに、地域の方々からたくさんお声掛けをいただくようになり、土曜日、日曜日には地域の公民館・体育館などに出向き、社会教育・生涯学習として、「健康安全プログラム」として地域の皆さまにお伝えしてきました。
有り難いことに、さまざまな市町村で開催された講座・教室・研修等の受講生の中から、「健康安全プログラム」の必要性を実感してくださる方々がたくさん現れました。特に幼児・児童を抱えた母親たちが継続を切望してくださいました。そして、自主サークルを立ち上げ、活動をつないでくださる市民・ボランティアの輪が広がり、山梨県全域で体感できる「健康安全プログラム」へと育てていただきました。
県内各地を駆け巡る中で、「命のかけがえのなさやつらなり」「いざという時に身を守る術やこなし方」「非常時の心の在り方」等をまだまだ知らない県民の皆さまが多いことに直面し、悶々とする毎日が続きました。特に、社会的にサポートを必要とする高齢者・障がい者・女性・子どもたちに、まだまだ「思い・願い」が行き届いていないことに気づきました。そのことが、それぞれの生活環境・年齢・体力等のニーズに応じた、より実践的で効果的な「健康安全プログラム」の考案につながっていきました。
「かけがえのない命を守る」ためには、「健康と安全」は決して切り離しては考えられないものです。ところが県民の皆さまの意識は、「健康と安全」の概念が分離したままでした。そこで「健康と安全」の課題を故郷・地域で解決していく「郷育」という概念を取り入れ、「山梨発信!健康安全郷育プログラム」として市民・ボランティア活動を進めてきた結果、現在では1ヶ月に約1000人、年間1万人以上の県民の皆さまと交流させていただいています。
3.本格的な活動を開始
前述した「大阪教育大学付属池田小事件」が、「学校での健康安全教育の在り方」や「命を根本に置いた教育の在り方」を考える直接のきっかけとなりました。また、実生活においては14年間の闘病に勝てなかった実父の死と向き合った体験や、生後間もない頃病気で生死を彷徨った息子の経験等が重なり、「一度しかない人生悔いなく精一杯生きたい」という思いが日に日に強まっていき、最後には大きな風に背中を押され、使命を感じながら学校現場を出るカタチとなりました。
2008年に教員を退職し、今後の活動を模索していた頃、「耕そう・撒こう・育てよう」を掲げた「山梨県ボランティアセンター」との出会いがありました。センターは、私にとって真のボランティアについて学ぶ「学校」であり「居場所」、そして、「心の拠り所」になりました。
センターに通い始めて間もない頃に、「山梨県ボランティア協会」からの推薦で、「緑の協力隊20周年記念隊」に山梨代表として参加させていただきました。これは、日本沙漠緑化実践協会が実施している内モンゴル自治区にあるグプチ砂漠を緑化する植林ボランティアで、協会の初代会長、故遠山正瑛(とおやま せいえい)先生[1]が1991年に始められたものです。この活動に参加して、「苗木を植えるということは、実は心と体に木を植えることであり、明日を植えることでもある」ということを体感しました。そして、教員時代から進めてきた「山梨発信!健康安全郷育プログラム」を通して、どうしたらもっと、ふるさと山梨の皆さまの心と体の渇望を満たし、“元気と癒し”を与えることができるだろうかと深く考えるようになりました。
4.グプチ砂漠にて
グプチ砂漠で心に刻んだ言葉の一つに『無創道(創らなければ道は無し)』があります。それ以降、「自分の足で第一歩を踏み出さなければ、人生には何も生まれない」、また「やればできる。やらなければ何もできない」、「継続こそ力なり」を心に刻み日々活動しています。
異国で砂漠の大地に手を触れ炎天下の中、額に汗して全身全霊を傾けてポプラの苗木を植えていく中でしか体得できない希有な感覚。それは、私たち人間にとって最大の幸福とは、天と地に抱かれて「生かされていること」であり、「よりよく生きようとすること」が生きがいにつながるのだと言う実感です。誰もが自分の命と遺伝子を守るために生きています。その事実を私たちの心と体は本能的に理解して、その本能が生存の母体としての森を欲するのではないのでしょうか。しかし、残念ながらここ山梨、日本にも本物の森が崩壊し、どこを見渡しても砂上の楼閣が広がるばかりです。心と体の沙漠化=心の荒廃・体の退化が進んでいる今こそ、親や大人たちが変わる必要があります。大人が変われば必ず子どもたちも変わり、明るい未来が拓けるのではないでしょうか。 まずは、大人が自らの心と体に木を植えること。そして、しっかりと大地に根を張って、どんなことがあろうともくじけずに我慢して生き延びて、天高く伸びること。そんな生きる力、「根本元気」が子どもたちに自然と伝播するのではないでしょうか。
野生生物や自然は、生物多様性に基づく命の多重構造の中でこそ、ダイナミックに変動する環境に柔軟に対応できると言われています。そして、多様な生き物が競争しながら、お互いが少しずつ我慢して共生し、共に発展していくのだそうです。であるとするならば、人間社会も当然、いろいろな人種、いろいろな考え、いろいろな立場の人が入り交じった、種々雑多な社会が最も健全となるに違いありません。「違い」こそが大切にされるふるさと山梨、日本であって欲しいと願ってやみません。
「幼木を2本植えれば『林』、3本植えれば『森』、5本植えたら『森林』になります」。ふるさと山梨に愛という木を植える心と体の緑化活動を、あきらめずに続けていくことがほんものの森づくりにつながると信じています。
5.今後に向けて
活動をする中で岐路に立った時には、ふるさと山梨のボランティアの祖の声がいつも聴こえてきます。
“光美ちゃん、事業家でなく活動家。リーダーではなくワーカーであれ。そして、ボランティアの火種を絶やすことなく、満ち潮の時こそ膝をついて謙虚に生きろ。お陰様お陰様だぞ・・・。”
今「リズムオブラブ」は、「事業体」としてではなく「運動体」として、そして、私は、「事業家」ではなく「活動家」を選択して、ふるさと山梨に活かされています。そのために、今一番大切にしているキーワードは、行政・企業・NPOとの『協働』です。三者を「和える」ことです。和えて新しい価値を創り出すことです。『協働』とは、異なる主体が目的意識を持って、その目標を共有し、対等な立場で目標達成のためにともに力を合わせて活動することです。
「リズムオブラブ」が約10年間携わり、実行委員長も仰せつかった「郷育フォーラム」も『協働』のひとつです。私の活動形態として、この厳しいふるさと山梨の現実の中で、初心を忘れず、想いと情熱を絶やさず前に進むためには、今は『協働』が最善だと感じています。
お陰様で、今までの実績を信頼してくださり、山梨県・山梨県警察・サンニチYBSグループ等との『協働』による「山梨県地域活性化協働事業」を3年連続で受託しました。
「リズムオブラブ」の活動理念に共感していただき、今日まで活動を支えてくださっている「愛好者・サポーター・ボランティア・通信やSNS等の愛読者」の存在が私の心の支えになっています。これからは『協働』のパートナーになっていただける団体・企業をさらに増やすこと、応援していただける有志をもっと募ることが私の課題です。そして、共に明るい方へ・陽の当たる方へ進むこと、「ウィン&ウィン」ではなく、「ハッピー&ハッピー」の関係性を目指しています。これからも身の丈に合った活動をコツコツと一緒に進めて参ります。皆さまどうぞよろしくお願いします。
6.ボランティアのこころ
自らの心に 灯をともし 他者への 愛をもちながら 生きている人は 生き生きと 生きている (枝見静樹氏の言葉) |
ふるさと山梨の各地域で開催されている「リズムオブラブ」の様々な講座・教室・研修・イベント・ステージ等々でボランティア体験をしてみませんか?「TO YOU」から「BY YOU」へ意識が変容することでしょう。多くの方々のご参加をお待ちしています!
【ボランティア5つのステップ】
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そして、最後に私の活動をいつも応援してくださった、山梨のボランティアの父、故岡尚志(おか なおし)先生からいただいた言葉を読者の皆さまに贈りたいと思います。
『生きているということ』 生きているということは、誰かに借りをつくること。 |
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