農家の熱い想いを知ろう


毎日新聞No.478 【平成28年12月23日発行】

 農業の衰退が指摘されて久しい。既に農業従事者の主力は60代後半から70代である。このまま10年も過ぎれば、個人農家はなくなりかねない。でも、消費者の関心が日本の農業・農作物に向いてくれば、地域の農業が生き残れる可能性があるのではないか。

 先日、ある自治体が主催した都会の消費者を対象とした農業体験ツアーのお手伝いをさせていただいた。親子連れや飲食関係者など約30人に、移住者が有機農業で取り組んでいるニンジンやカブなどの収穫を行ってもらい、地元の農作物を使ったランチを味わっていただき、酒造メーカーなどを見学していただくといった内容であった。
 私自身は子供の頃、田舎の祖父母の家で田植えや蚕の世話で手伝いをしたことがあったが、正直言って農業体験に興味はなかった。しかし、都会からやってきたツアー客は八ヶ岳からの強い北風も「都会では感じられないすがすがしい雰囲気」と言い、農業体験にも喜々として取り組んでいた。
 「都会の人にとってみれば非日常の体験が面白いのだろう」。私はその程度に考えていたのだが、ハッと気が付いた。それは、畑を提供してくれた若い農業経営者・従事者の農業に対する「想い」を感じるようになってきたからである。
 参加者の作業を手助けする姿は、農作業をいかにも楽しんでいるようにきびきびしており、作業の合間のさまざまなお話からは農業に対する想い・熱意をひしひしと感じた。参加者に対する心遣いも素晴らしく、農場を去る頃には全く感動してしまった。ニンジンの葉はすぐにしなびてしまうため、配送ができないそうだが、お土産に頂き夕食で天ぷらとして食べたところ大変美味で、こちらにもすっかり魅了されてしまった。
 ツアー参加者へのアンケートによると、農業体験は大変満足したようであった。酒造メーカーへの立ち寄りなどいらないので、もっと農業体験を充実させてほしい、との声も多く寄せられた。おそらく、参加者も実際に農業を体験し、農業経営者・従事者と直接触れ合って、食に対する関心を深め、食の大切さを実感したのではないかと思う。

 安全・安心で、作り手の細やかな感性・気遣いが感じられる日本の農作物をもっと食べてほしい。熱い想いを持ち農業を支える若手農家の姿を知ってほしい。そうすれば、日本の農作物への関心が高まり、支持されるのではないか。今はそう感じている。

(山梨総合研究所 専務理事 村田 俊也)