当たるも八卦、当たらぬも…


毎日新聞No.479 【平成29年1月6日発行】

 例年、私が元旦の朝に楽しみにしていることに、家族のあいさつ、友人知人からの年賀状、皆で食べるお雑煮、そして年末ジャンボ宝くじの当選結果がある。子供の頃は祖父母や親戚等からいただくお年玉に心をときめかせていた。就職してお年玉をあげる側に立場が変わってからは、おおみそかに抽選が行われて元旦の朝刊に当選番号が掲載される年末ジャンボ宝くじが「ときめき」をもたらすことになった。
 一般財団法人日本宝くじ協会が昨年8月に公表した「第14回宝くじに関する世論調査」によると、過去に宝くじを購入したことのある購入経験者は76.4%、実に4人に3人は購入した経験があるとのことで、私のように年末年始の心の「ときめき」を期待している人も多いのではなかろうか。そんな心の「ときめき」(もしかしたら懸念)を感じる機会が今後増えていきそうだ。

 昨年12月15日、国会においてカジノを中心とする「統合型リゾート(IR)整備推進法」(カジノ法)が成立し、カジノ施設や会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設など、観光振興に寄与する施設が一体となった、いわゆる統合型リゾートの整備が進められることとなった。観光立国推進の起爆剤として地域経済への好影響が期待される一方、国際的な過当競争状況や、利用者のギャンブル依存症対策などの不備を指摘する意見も根強く、連日メディアをにぎわせていたのは記憶に新しい。
 現在、日本各地で地方創生の取り組みが進められており、その主要課題である観光客等交流人口の増加の起爆剤として統合型リゾート施設の整備に取り組む事例も増えていくことが予想される。ただ、交流人口増加の方策の王道は、他の地域では楽しめない、その地域だからこそ体験できる「地域の魅力」を磨き上げることにあり、新たに魅力(と思われるもの)を人工的に造り出す手法は地方創生になじまないと私は考えている。

 地方都市における日々の生活において、廃業したパチンコ店跡地を見かけるたびに、統合型リゾートが「当たる」のか「当たらぬ」のか、そんな「ときめき」を感じずにはいられない。

(山梨総合研究所 主任研究員 森屋 直樹)