だれもができる「働き方改革」


毎日新聞No.481 【平成29年2月3日発行】

 現在、「働き方改革」、とりわけ、長時間労働是正の取り組みについて、注目が集まっている。先日も、自民党の二階俊博幹事長がテレビの討論番組で「働き方改革」のうち、長時間労働を規制する法整備について、政府が関連法案を今国会へ提出するとの見方を示したところだ。
 長時間労働の要因には、どのようなものがあるのか。「平成272015)年度過労死等に関する実態把握のための社会面の調査研究事業」(厚生労働省)によると、所定外労働時間が必要となる理由として、労働者(フルタイムの正社員)が挙げている回答は「人員が足りないため(仕事量が多いため)」が最も多く41.3%となっている。このことから、長時間労働の解消には、業務量を減らすことや、人員を充足することが不可欠であると推察される。

 ところで、筆者が注目したいのは、次に回答が多い項目である「予定外の仕事が突発的に発生するため」の32.2%である。この状況のすべてが、果たして不可避的なものであろうか。
 例えば、大量の業務を期日直前に依頼され「至急対応してほしい」といったケースがよくある。筆者の経験上、当該業務の中には、もっと早い段階で依頼することが可能だったのではないか、と思われる事例があるのだ。予定されている業務であれば、スケジュール管理をし、業務の期日に間に合わせられるよう、他の業務と折り合いをつけ、段取りを組むなど、余裕を持って対処することができる。ところが突発的な業務の場合、他の業務と重複するなど業務を遂行する手順や時間を平準化できない。結果として、当該業務を完了させるために、長時間労働せざるを得なくなってしまう。
 業務を他人に依頼する、あるいは部下に業務の指示を出す場合、相手の業務時間の確保に気を配り、早めに業務を依頼する、また、仕事の手戻りがないよう業務の方向性を決めた上で具体的な指示を出す、といった配慮を行っているか。もう一度、日々の業務を振り返ってみてはどうだろうか。そうした他者への気遣いが、長時間労働の削減につながるかもしれない。

 「もしかしたら、自分の行動が他者への長時間労働を生んでいるかもしれない」という自覚を持ち、相手が業務を遂行しやすいように一工夫する―。だれもができる「働き方改革」として、今すぐにでも始めていきたい。

(山梨総合研究所 主任研究員 安部 洋)