アクセス!RESAS!
毎日新聞No.482 【平成29年2月17日発行】
地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」をご存じだろうか。
地域の“見える化”を目的に経済産業省と内閣府が開発し2015年に運用を始めた。国勢調査、経済センサスといった公的データと、VISA、NTTドコモなどの民間企業によるデータ約8億件が集められている。誰でもインターネットから無料でアクセス、利用できるのが特長だ。
人口推移、人口推計、事業所数、年間商品販売額、観光客の地域での動きなどなど。各調査機関のサイトに散在するこうしたデータは抽出するだけでも煩雑だが、リーサスを使えば短時間で見つけることができ、グラフや地図といった見やすい形で確認できる。データの自治体比較も簡単で、見ているだけでも面白い。「人口が減っている」、「店が減っている」、「外国人観光客は富士山周辺だけ」といったよく聞く話は、データという客観的数値で確認することによって、より現実的、具体的に受け止めることができる。
山梨総合研究所は本年度、山梨県の委託を受け、リーサスの普及啓発に取り組んできた。高校生、大学生、社会人を対象に、基本的な「操作編」と、地域の課題と解決策を考える「演習編」に分けて研修会を開いた。
ご参加いただいた方々は、システムを使いこなすようになるのはもちろん、豊かな発想と鋭い感覚でデータを読み解き、興味深い提案をしてくれた。例えば、リーサスの「目的地分析」で観光客が多いスポットを調べ、新たなバスルートの開設を提案する、といった具合にである。
このシステムが生む最大の成果は、私たちが街の現状や課題に興味を持ち、当事者として何をすべきか考える機会を作ってくれたことではないだろうか。A市とB市で人口構成や主産業は似ているが、A市は活気があり、B市は衰退が止まらない。もしも自分が住む街がB市で、なぜそうなのかを考え始めたとき、地域と向き合う時間が生まれる。
近い未来、中部横断自動車道が静岡まで開通し、リニア中央新幹線が営業運転を始める。これら交通インフラの整備は、山梨県が新たに発展する可能性を秘めている。山梨県にとって大きな転換期を迎える今、リーサスを活用して明日のわが街について考えてみてはいかがだろうか。
(山梨総合研究所 研究員 渡辺 たま緒)